日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

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追悼 風の大久保一久氏を偲んで【動画シリーズ9月(3)】

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追悼 大久保一久

死去のニュースと近年の動向

大好きな「風」の大久保一久氏が亡くなってしまいました。
75年”かぐや姫”の伊勢正三が、元”猫”の大久保一久氏と結成したのが「風」。79年休止以降はそれぞれソロとして活動。

その後、大久保氏は薬剤師に転向しましたが07年5月の伊勢正三ライブに飛び入り参加(90年にもあり)を経て、同07年7月には伊勢氏が恒例で行なっていたLive inべるが(山梨県白州町)で28年ぶりに本格的な共演を果たしました。

それを皮切りに翌年には約30年ぶりとなる風としてのツアーが予定されていましたが、そのリハーサル中に脳血管障害で倒れ、緊急手術に。手術は成功したものの復活ツアーは幻となってしまいました。

 

一夜限りの復活ステージ

「風」は何度も書いていますが僕の音楽人生に大きな大きな影響を与えてくれた存在です。本当に大げさでなくほとんど毎日聴いています。どちらかと言えば伊勢氏に絶大な憧れを抱いている僕ですが、それに負けず大久保氏の楽曲も大好きで、2人いてこその風なんです。

僕は78年生まれなので風としてのライブは生では見たことがなく、ライブ盤の音声や数少ない映像でしか彼らに触れることができませんが、2人のMCでのやりとりとか、演奏とか、その雰囲気に触れるたびに2人の関係性を想像しては思いを馳せ続けています。

07年の一夜限りの復活のライブが、後に発売された『伊勢正三LIVE BEST〜風が聴こえる』(2CD+DVD)のDVD部分に収められています。緊張のためかぼーっとしているように見える大久保氏と対照的にとても嬉しそうな伊勢氏の表情が印象的です。

楽曲・歌声ともに才能の塊である伊勢氏の相棒ということでどうしても大久保氏は比較されてしまうこともあったでしょう(正直言うと僕も楽曲は好きでしたが昔は歌声はそんなに好みではなかったのです)。

ですが07年の復活ライブを観てみると、声質も歌唱法もどんどん変わっていく伊勢氏に対して、大久保氏は「ウソ!?」と思うくらい昔のままの歌声だったのです。本当にとても驚きました。「久保ヤンだ!」と感動しましたね。

 

伊勢正三氏の追悼メッセージ

大久保さんへの追悼のメッセージが伊勢氏のHPに掲載されています。

  ”やさしかった久保ヤンへ。 (中略)
 久保ヤンのやさしさがなかったら、「風」は存在せず、
 僕はただの孤独な男に過ぎなかったのです。
 ありがとう、久保ヤン。おやすみなさい。”
             (引用ここまで)

休止の頃の2人がどのような関係だったかは知る由もありませんが、言葉では言い表せないような特別な絆で結ばれている、そんな賭けがえのない関係だったのだと思います。

 

ふたりの絆、「久保やんのやさしさ」

「久保ヤンのやさしさ」。追悼文で伊勢氏はそう書いています。彼がいなかったらただの孤独な男だったとも。

これは僕の推測でしかありませんが、伊勢正三という人は”優しい好青年”的なイメージがありますが、多分こだわりが強く、集中しすぎたり突っ走ったりすることが多々あったのでは?と想像しています(あくまで想像ですよ)。

そんなときに大久保さんが隣でフォローしたり、和やかな雰囲気を作ったり、また突っ走るときにはとことん付き合ったりしていたのかなと。

「はずれくじ」という伊勢氏による楽曲がありますが、ライブではイントロがアドリブになっていて何分間も歌が始まらないという曲です。当時の日本のフォーク界ではかなり突飛なアイデアだったようですが、それに対し「久保ヤンはどんどんやれと言ってくれる」みたいな発言もどこかで見かけました。

風の復活ツアーは幻となりました。すぐには無理だとしてもいつかやってくれる日を心のどこかで待っていました。復活は無理でもせめて生きていてくれたら...。本当に残念でなりません。

 

 

デビューシングルc/w「約束しようよ」カバーしました

今回カバーしたのはそんな大久保さんの楽曲。風の1stシングル「22才の別れ」のB面に入っていた曲です。

僕が小学生だった頃よく親が車でかけていたカセットテープにこの曲が入っていました。覚えるくらい何度も聴いていて、ある意味思い出の歌です。

アルバム未収録の曲のため長らくCD化もされていなかったのですが、07年にようやく『シングルコレクション〜22才の別れ〜』に収録され久しぶりに聴くことができました。幼い頃の記憶や家族旅行の思い出が一気に蘇りましたね。

風は中期以降AOR化していきますが(そのカバーは次にアップします)、この涼やかで軽やかな初期曲を、まずは追悼と思い出の記しとして歌っておきたいと思います。

(※今回思い立って自宅でなくスタジオで撮影しましたが、追悼に相応しくない赤バックになってしまいました、、ごめんなさい!)


www.youtube.com

「約束しようよ」
Coverd by 残像のブーケ(a.k.a.大森元気)
2021.9.22公開
Written by 大久保一久
Original Release:
・風 Sg『22才の別れ』1975
・風 Best『シングルコレクション』2007(同テイク)

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代表曲「トパーズ色の街」

フォークからサウンド志向~AORに。変遷していく「風」

さて前回(上記)に続き、風・大久保一久氏の追悼、2曲目です。彼の代表曲としてこの歌をあげる人も多いです。

何度か書いていますが、風は4年の活動期間の中で音楽性を変貌させていきます。デビューと同時に「22才の別れ」が大ヒット、「海岸通」「あの唄はもう唄わないのですか」「北国列車」など1〜2枚目はフォーク系の名曲が並びます。伊勢氏の楽曲とともに大久保氏にも「なんとなく」や「古都」「三丁目の夕焼け」など人気曲も。

その後3枚目前後から「ささやかなこの人生」「君と歩いた青春」などのポップな名曲をリリースしつつ、フォークの枠を大きく越えAOR化していきました。「ほおづえをつく女」は3枚目収録ながらすでに実験は始まっていました。

当時は「サウンド志向」という呼び方をしていたようです。 4〜5枚目はロス録音となりすっかり変貌を遂げています。「海風」「冬京」「月が射す夜」など伊勢氏の楽曲は有名ですが、今回僕がカバーした「トパーズ色の街」や「おそかれはやかれ」、スティーリー・ダンのオマージュとも言える「夜の国道」など、大久保氏も伊勢氏に引けを取らないクオリティーの楽曲を制作しています。

大久保氏には、そのほかにも「デッキに佇む女」「防波堤」「あとがき」などなど(挙げだすとキリがありませんが)派手さはなくとも本当に味わい深い曲がたくさんあるんです。

 

(推察)AOR化の萌芽は1stの大久保氏楽曲にあり?!

このような変遷が伊勢氏・大久保氏どちらきっかによるものなのか、僕は知りません。もちろん共に活動していたわけで、海外での音楽の動きを同時にキャッチしていたと思われます。

しかし興味深いのは、伊勢氏が作風を変えていくのが3rdあたりに対して、大久保氏は「ロンリネス」というアンニュイな楽曲をすでに1stに収録しており、これが中期以降のAORを予見するような楽曲なのです。

グループとしての方向転換を決めたのは伊勢氏であるでしょうが、少なくとも1枚目から大久保氏はその可能性のある楽曲を書いていたと。それはとても興味深いことだなと、個人的な考察ではありますがそんなことを聴くたびに思います。

 

代表曲「トパーズ色の街」

そんな重要曲「ロンリネス」もいつかカバーしてみたいと思っていますが、今回は中後期の名曲、そして大久保氏の代表曲である「トパーズ色の街」を歌ってみました。

AORやシティの定義は僕にはよくわからないですが、フェイザーの効いたおしゃれなエレキギターのリフ、隙間を生かしたベース、タイトなドラムス、歯切れのよい鍵盤、味付けするシンセの音色など、AOR〜シティの美味しいところが詰まっています。

かと言って楽器やグルーヴに寄りすぎもせず、メロディーがキャッチー。シングルカットされることはありませんでしたがシングルとしてもヒットしたのでは?と思わせるクオリティーの名曲です。

僕のカバーはギター1本なのでそこらへんのサウンド的な再現はできませんでしたが、曲自体のもつポップさと切なさは表せたでしょうか。オリジナル未聴の方は是非聴いていただきたいと思います。

 

シティポップ好きの若い世代にも是非

収録されている4thアルバム『海風』はロス録音による大名盤。フォークの片鱗はほとんどなく賛否両論あったと想像できますが当時チャート1位を獲得したそうです。

ちなみに、昨今のシティポップブームにより、僕らの世代やもっと若い世代にも「風を聴いてみよう」という人が増えていることは嬉しいのですが、どうしてもシュガーベイブ吉田美奈子ハイファイセットの面々が参加したファーストを最初に聴いてしまって、『海風』にたどり着かないというジレンマがあったり。

ファーストはもちろん名曲ぞろいだし新しいことも取り入れたりはしているのですが基本フォーク期なので、シティ目当ての人には肩透かし?みたいな状態になるのでは?とそんなことを勝手に思ったりしています。

 

前回に引き続きスタジオで撮影したため、追悼にふさわしくない赤バックになってしまって申し訳ありません。 それにしても彼の代表曲のこの曲で歌われている季節に彼の訃報だなんて。偶然の一致に悲しみは募るばかりです。

「♪秋だと云うのに街はいまだ夏の香り
   残しているから僕はあの娘 思い出してしまうのさ」

「♪今ではトパーズ色の街が
   誰かを寂しくさせてしまう」


www.youtube.com

「トパーズ色の街」
Coverd by 残像のブーケ(a.k.a.大森元気)
2021.9.22公開
Original Release:
風『海風』(1977)
風『Old Calendar〜古暦』(1979)※別アレンジ
& more best album

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information 


大森元気(ex残像カフェ/花と路地)は「残像のブーケ」というソロプロジェクト名で2020年心機一転始動しました。

【News / Release】
◆20.12.24 アルバム先行 第2弾「boys&girls」期間限定デジタルリリース
・Trailer映像▶こちら
各サブスクへのリンクページ▶こちら

20.6.12 残像のブーケ初リリース曲「ぼくの愛する暮らし」参加コンピリリース
・MVつくりました▶ こちら
・各サブスクへのリンクページ▶こちら
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Youtubeチャンネルにて自宅で歌うセルフカバーシリーズ公開中。弾き語りシリーズ不定期更新中。

【Live】
20.8 残像カフェ10年ぶり再集結終了。ありがとうございました。
残像のブーケおよびサポート参加ライブは決まり次第お知らせします

【OtherWorks】
・2021年11月発売、RISA COOPERこと岡田梨沙のソロアルバムに1曲楽曲提供しました→特設ページ / 全曲Teaser動画
あがた森魚 2013年以降の複数アルバムにコーラスで参加しています。またライブも不定期でサポート参加中(コーラス、アコギ、エレキギター
・2019年公開より1年以上今なおロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚)エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。
・「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。