日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

「アイスキャンディー」制作秘話と村上春樹作品の失われた海岸【動画シリーズ9月(2)】

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動画シリーズ振り返り続きです。夏の終わりの季節を描いた自分の歌「アイスキャンディー」の弾き語りです。

歌詞とメロディーが同時に浮かんできた

「歌詞とメロディーが一緒に浮かんできた」なんて人の話や記事をときどき見かけますが、僕はそんなことがあまりないので羨ましいなと思うばかり。ですがこの「アイスキャンディー」は珍しく僕にもそんなことが起こった歌でした。

とはいえ全ての歌詞が同時に出てきたわけではなく、もちろん部分的にです。だからその浮かんだ断片をヒントに、まるで謎解きのように残った部分に歌詞をつけていきました。

そんな作業はいつも楽しんでできるのですが、この歌に関しては非常に難航しました。変えたくない言葉を生かしていくと、どうにもストーリーが矛盾してしまう。なかなかうまく組み立てられないのでした。

それで数年間いろんな歌詞を試しながら歌っていましたね。

 

ストーリーが繋がらないまま完成させる意味

初稿は2006年くらいで実際レコーディングしたのは3年後の2009年でした。その間もずっと弾き語りライブとかでは歌っていて。録音しようと決めたときに、もう歌詞をいい加減固定させなければと改めて向き合いました。結局いろいろ作った歌詞はやめて、ほぼ最初の歌詞に戻すことにしました。

無理に言葉を入れ替えてうまいストーリーを作り上げたとしてもワザとらしい気がしたし、説明的になってしまう。聴いた人がそれぞれ物語を想像してもらえたら。そういう余地って、大事だけれど自分の歌にはだんだん少なくなっているようにも思えて。

あともう1つ大事なのは「歌っていて気持ちいいこと」。言葉がメロディーやリズムに乗るかどうかと考えた場合に、歌と同時に出てきた歌詞にはかなわないのです。

 

自然に作るということ=気持ちよく歌えること

 曲については趣味で作ったような地味な歌だと当時も今も思っていますが、何故かファンの方には人気がありました。作曲のときに頭にあったことは「とにかく自然な展開を」ということ。

売れ線にしようとするとき、もしくはより人の記憶に残ったり、インパクトを強めたり、そんな意図が働く時、僕はどんどんメロディーやコードをこねくりまわしてしまいがちです。

この歌についてはどうせ売れ線の曲でないのだから(笑)なるべく姑息なことをせず、奇をてらわず、ひらすら気持ちの良いメロディーになるように探っていきました。もちろんいつもそう思って作っていることですが、その意志が他の曲よりも強かった気がします。

自然というのはつまりはシンプルだし、歌っていて気持ちがよいこと。そして覚えやすいこと。だから良い評価を頂いたのかも知れません。売れ線の逆をいこうとしたのになんとも興味深いことです。

というわけで全然シングルっぽくないけど、ソロ2作目のシングル(ミニアルバム表題曲)に選び、MVも作りました。リリース音源ではドラム含め全楽器一人で多重録音にもチャレンジしています。

 

ロケ地複数のMVと村上春樹作品の失われた海岸

MVでは複数のロケ地で撮った動画素材を組み合わせて編集しています。砂浜は鎌倉の七里ガ浜(由比ヶ浜だったかも)、観覧車とミニSLは実家のある栃木県鹿沼市(ガッキーの主演映画「恋空」と同じロケ地!)、お祭りは杉並の大宮八幡、そして赤い壁の倉庫やその他いくつかの場面は神戸の三宮で撮りました。

なぜ神戸だったのかといえば当時よく読んでいた村上春樹氏の初期作品群の雰囲気をなんとなく織り込みたくて歌詞を書いた経緯があったからでした。

今はコンクリートで埋め立てられてしまった海岸線、そんな描写がどこかにあったはずで、それは確か神戸の海が舞台になっていました。

神戸(三宮)には頻繁にお世話になったライブハウス「backbeat」(2020年閉店)や、その近所に大好きな焼鳥の名店「炭玄」がありますが、そこを除けば土地勘がなく、春樹氏の描いた海岸が実際どこにあったのか今も知らないままです。けれども、なんとなく神戸の風景をMVに入れておきたくて盛り込むことにしました(倉庫と道端しか映ってませんが)

そんなわけで、今回着ているTシャツも村上春樹Tというわけです(マニアしか気づかない)苦笑


www.youtube.com

「アイスキャンディー」
written & performed by 大森元気
2021.9.15公開
original release
: ・大森元気『アイスキャンディー』2009
・大森元気『メランコリー-2009-2018BEST』2018(同テイク)
・大森元気『夏とギター2010』弾き語りver
※今回の動画にノイズのような光が映り込んでいますが撮影時のものです。ご了承ください。

 

 

◆弾き語り動画シリーズ(一覧ページ)はこちら

 

information 


大森元気(ex残像カフェ/花と路地)は「残像のブーケ」というソロプロジェクト名で2020年心機一転始動しました。

【News / Release】
◆20.12.24 アルバム先行 第2弾「boys&girls」期間限定デジタルリリース
・Trailer映像▶こちら
各サブスクへのリンクページ▶こちら

20.6.12 残像のブーケ初リリース曲「ぼくの愛する暮らし」参加コンピリリース
・MVつくりました▶ こちら
・各サブスクへのリンクページ▶こちら
※再生していただくだけでコロナ禍打撃店舗への支援収益となります

Youtubeチャンネルにて自宅で歌うセルフカバーシリーズ公開中。弾き語りシリーズ不定期更新中。

【Live】
20.8 残像カフェ10年ぶり再集結終了。ありがとうございました。
残像のブーケおよびサポート参加ライブは決まり次第お知らせします

【OtherWorks】
・2021年11月発売、RISA COOPERこと岡田梨沙のソロアルバムに1曲楽曲提供しました→特設ページ / 全曲Teaser動画
あがた森魚 2013年以降の複数アルバムにコーラスで参加しています。またライブも不定期でサポート参加中(コーラス、アコギ、エレキギター
・2019年公開より1年以上今なおロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚)エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。
・「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。