日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

僕の原点とも言える夏の2曲~伊勢正三「湘南夏」、南こうせつ「幼い日に」カバー【動画シリーズ8月(3)】

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動画シリーズの8月公開分をアップしてる途中でした。今回は自分の原点ともいうべきこの二方の歌。

「湘南 夏」かぐや姫伊勢正三)カバー

いつも湘南を想っていた

“湘南”というと僕なんかは田舎の出身なので、ぱっと浮かぶのは江の島あたりの風景なのですが、厳密には大磯から茅ヶ崎・辻堂・江ノ島はもちろん、鎌倉を越えて逗子・葉山までが湘南なんだそうです。要するに相模湾に面している地域ということですね。

名称の由来などは割愛しますが(相模国、それから古い中国の地名云々...)、どうしてそんなことを書くかというと今回カバーした「湘南 夏」の歌い出しはこんなこんな描写が。

「湘南へ帰る人たちの顔がとても優しい
 少し心が落ち着いた鎌倉すぎたあたり」

これはどういうルートで進んでいるのかなと。

この曲を初めて聴いたのが小6か中1の頃でしたが(リアルタイム世代ではなく後追いです)、鎌倉が好きというのもあるし、以来ずっと田舎から思いを馳せていましたね。

 

湘南へ帰る人たちを見ている主人公

歌詞の雰囲気から、電車に乗って海を見に行っているとみるのが自然でしょう。「鎌倉を過ぎた」ということは、須賀線で逗子・葉山方面へ帰る人たちのことを言っているのでしょう。

「なぜ海を見たいのだろう」
「もしも沈む夕日に間に合えばただそれだけのこと」

僕の想像ですが、歌の主人公は湘南に住んでいるのではなく、東京かどこかの都会に住んでいる。そしてときどき夕日の沈む海を見たくなって、こうして電車に揺られるのでしょう。その目に映る「湘南へ帰る人たち」の目がとてもやさしい。都会で疲れた体や心を、湘南の風景で癒したいような、そんなひとときが思い浮かびます。  

伊勢正三の無常観

けれどもそこに目的を置き過ぎるでもなく、大きな充実感を得るでもなく「ただそれだけのこと」と締めくくるあたり、伊勢正三氏らしいなと個人的には思います。

当時の発言に「動いているから風なんだ」「たまたまそういう2人がそこにいただけ」近年でも「常に変わっていくもの、まず見た目が同じでいられない」などの発言も。そういう“無常観”みたいなものを伊勢正三氏という人は持っているように思えます。それは達観しているようにも映るし、とことん自然体のようにも思えます。

「海を見たくなる」「沈む夕日に間に合えば」と海に行くくせに、叶っても(叶わなくても)「ただそれだけのこと」と半ば言い捨てる。ちょっとキザで、かっこいいなあと。

 

コードのことは伊勢氏から学んだ

以前「ささやかなこの人生」カバーのところでも書いていますが、僕にとって伊勢正三氏の存在は尊敬する憧れの存在。ヒーローであるとともに教科書的な存在でもありました。ギターを弾き始め、曲作りを始めた頃、歌詞やメロディーもそうですが、特にコードのことはだいたい伊勢氏の作品から学びました。

この「湘南 夏」も、もっと簡単なコードでも演奏することができますが、ディミニッシュやフラットナインスなどのちょっと複雑なコードが各所に散りばめられています。

また普通のコードの部分も普通に弾くのではなくテンションノートが入っています。ざっくり説明するとドミソだけでも成立するところにシとかレとかを足しているんです。M7(メジャーセブン)や 6(シックス)の和音で、ジャズとか、時代が下ればシティポップやAORの特徴的なコード感になるのですが、要するにちょっとおしゃれな感じになるんですね。

 

シティポップ再評価の中での位置づけは?

まあ伊勢氏だけがやっていたわけではないし、シティポップ以降は多用されるコード感ですが、フォークの界隈でいち早く取り入れて、グループ「風」がアルバムごとにどんどん変遷していったりとか(乱暴に言えば売れ線フォークをやめてスティーリー・ダン化していく)、「湘南 夏」が入っている78年再結成かぐや姫にも新しい風を吹き込んでいます。(80年代にはさらにAOR化していきます)

あとコードではないですが、伊勢氏の歌にはサビの終わりの歌メロが、1度でなく3度で終わるパターンもわりと多く見られます。(ハ長調で言うと、ドでなくあえてミで終わらせるということ)それも変わってるというかストイックで好きなところなんですね。

いま日本のシティポップが再評価されてブームになっているようですが、細野晴臣界隈、シュガーベイブ界隈と別の角度から、彼らと同時期よりいち早く新しいサウンドや作曲法を取り入れていた伊勢氏の仕事は、今の若い世代にも再評価されるべきだと思っています。 まあ若者たちがみんな聴き出して語り出したりなんかしたら逆に畑を荒らされたようで寂しくなってしまうかもしれませんが(面倒くさいファン心理!笑)

 

最後は笑ってもらえたら

今回ライティングに失敗して、リングライトがずっとギターに写ってますね。あとから気づいて悔やんでます...

あと動画の最後は....苦笑いしてください(笑)もっとちゃんと準備してかっこよくやりたかったな(笑)思いつきでやっちゃいましたが、後で本家の音源を聴いていたら偶然同じ音が入っていてびっくりしました。

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「湘南 夏」
Peformed by 残像のブーケ(a.k.a.大森元気)
2021.8.20公開
Written by 伊勢正三
Original release:かぐや姫かぐや姫・今日』 & more Best Album

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幼い日に(南こうせつ)カバー

僕が音楽を始めたきっかけ

前回カバーした伊勢正三氏が僕のヒーローならば、南こうせつ氏は僕が音楽を始めるきっかけであり、以来今日に至るまで常に“根幹”に流れている大きな大きな存在。大きすぎて影響受けてるけどもう気づかないような、そういうレベル。血みたいな。植物で言ったら花とか葉でなく土みたいなものですね。

小6のときに親の聴いていたかぐや姫のカセットテープを聴いて、フォークソングを知り、自分でも歌ったり作ったりをするようになりました。 

ソロデビューとともに家族や原風景を歌い始めたこうせつ氏

今回カバーした「幼い日に」はこうせつ氏にとってもファンにとっても大事な曲。ソロ活動を始めて最初の代表曲と言ってもいいかもしれません。

「♪去年の夏までは兄ちゃんと来たけれど
   一人でここまで来たのは初めて」

こうせつ氏の楽曲の歌詞は作詞家が書くことも多いですが、もちろんこうせつ氏も書きます。この歌も彼のペンによるもので、自らの少年時代の思い出が元になっているそうです。

田舎の親戚のおばさんの家にひとりで行く思い出を描く、たったそれだけの歌詞。そしてメロディーもシンプル。しかしながらこんなに心打つ名曲になってしまう。そういう何気ない名曲はほかにもたくさんあって、はやりこうせつ氏はものすごい才能の持ち主だなと。

なお、同じアルバムには 「♪あんちゃんは あんちゃんは  遠くまで行くんだ 遠くまで」 と歌う「花一文目」という隠れ名曲もあります。お兄さんの登場する少年時代の歌がアルバムに2曲も入っているんですね。

かぐや姫を解散して3ヶ月後にリリースされたこの1stアルバム。かぐや姫において、恋愛とか東京での生活を歌っていたそれまでから一歩進んで、自分(やみんなの心の中にあるであろう)田舎の原風景や、少年時代や、家族のことも歌っていこうと。ソロとしてスタートするにあたり、そんな気持ちがあったのかもしれません。

 

つま恋や武道館では伝説のステージに

ちなみにこの曲、伝説の吉田拓郎かぐや姫つま恋コンサート(1975年 アルバムリリース翌月の8月、かぐや姫は急遽再結成)でもこうせつソロコーナーで演奏されました。

牧歌的なこの歌ですが最後のリフレイン部分(回数多め)では絶叫に近いハイテンションとなり、いつもは体力のあるこうせつ氏ですが珍しくステージを降りてすぐ倒れてしまうほどのヒートアップ具合でした。

かつてない規模感で行われた大イベントだったのでそれに対峙する気合いは並大抵のものではなかったのでしょう。(ちなみに同日かぐや姫のコーナーでは思い余ってギターを投げるシーンも)


またその翌年の日本武道館ソロコンサート(フォークシンガーでは初で、よく第1号と言われている矢沢永吉氏より早く、タイガースや西城秀樹氏よりは遅かった)でも歌われた様子がライブ盤になっています。そのときは倒れはしなかったものの、観客の大合唱の声がかなり大きく入っていて臨場感があります。

こんな風に、こうせつ氏にとってもファンにとっても特別な歌。ファンの人以外はあまり知られていないかもしれませんが、こうせつ氏の代表曲の1つであり、永遠に残る名曲だと思います。

 

名ギターソロと再録バージョンの謎

スタジオ盤は3種類存在していますが、基本アレンジは同じ。特にギターソロはこうせつ楽曲の中でも1・2を争う印象的な名ソロで、3バージョンとも同じフレーズで演奏されています(水谷公生氏によるもの)

追記
1980年ごろの再録バージョンを僕はベストアルバムで持っているのですが、どの作品が初出なのか僕のところに情報がありません。ご存知の方がいらっしゃいましたら教えてもらえたらと。予想は1980年移籍のタイミングで発売された『GREATEST HITS』かなと思っているのですが、どうでしょう?

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「幼い日に」
Perfomed by 残像のブーケ
2021.8.27公開
Written by 南こうせつ
Original Release
南こうせつ『かえり道』(1975)
・ 〃 ライブ『GOOD VIBRATION Mr. Kosetsuイン武道館』(1976)
・ 〃  新録 初出調査中(『GREATEST HITS』1980?)
・ 〃  新録 『サマーピクニック』(1990)
and more live album & DVDs


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information 


大森元気(ex残像カフェ/花と路地)は「残像のブーケ」というソロプロジェクト名で2020年心機一転始動しました。

【News / Release】
◆20.12.24 アルバム先行 第2弾「boys&girls」期間限定デジタルリリース
・Trailer映像▶こちら
各サブスクへのリンクページ▶こちら

20.6.12 残像のブーケ初リリース曲「ぼくの愛する暮らし」参加コンピリリース
・MVつくりました▶ こちら
・各サブスクへのリンクページ▶こちら
※再生していただくだけでコロナ禍打撃店舗への支援収益となります

Youtubeチャンネルにて自宅で歌うセルフカバーシリーズ公開中。弾き語りシリーズ不定期更新中。

【Live】
20.8 残像カフェ10年ぶり再集結終了。ありがとうございました。
残像のブーケおよびサポート参加ライブは決まり次第お知らせします

【OtherWorks】
・2021年11月発売、RISA COOPERこと岡田梨沙のソロアルバムに1曲楽曲提供しました→特設ページ / 全曲Teaser動画
あがた森魚 2013年以降の複数アルバムにコーラスで参加しています。またライブも不定期でサポート参加中(コーラス、アコギ、エレキギター
・2019年公開より1年以上今なおロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚)エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。
・「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。