日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

バンドマンが乃木坂にハマった話(2)〜強がる蕾(女優・深川麻衣さん)

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◆女優・深川麻衣さんのこと
今週から始まったドラマ「まだ結婚できない男」。2006年の前シリーズから13年越しの続編だそうです。前作は時々見ていたかなあ、うっすら記憶に残っています。

今回から加わる新キャストの中に深川麻衣さんの名前がありました。先日などは番宣で2番組連続(不在時間ありつつ4時間半)テレビ出演していてTwitterでも個人名でトレンド入りしていました。ファンが沸き立ってましたねー笑

前記事で、渋い音楽ばかり聴いていた僕が「やさしさなら間に合ってる」という楽曲に出会い乃木坂にハマったことを書きましたが、そのきっかけが女優として活躍中の元乃木坂・深川さんでした。

【前記事】バンドマンが乃木坂にハマった話(1)~フォーク歌謡?!「やさしさなら間に合ってる」 - 日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

今年の春くらい。朝ドラ「まんぷく」を経て、それを“逆オマージュ”した日清食品CMにも出演、それから映画「愛がなんだ」と「空母いぶき」が立て続けに公開。プロモーションでたびたびメディアに露出していました。
(その他「日曜美術」特別出演、「ことりっぷweb版」連載、また初の地上波主演ドラマとなった「日本ボロ宿紀行」もこの時期(金曜深夜)放送されていたと後で知りました。)


◆上京ソング「強がる蕾」
それで何となく気になって、多分インスタのタグからだったと思いますが「やさしさなら間に合ってる」に出会ったのは既述のとおり。それを含む4曲をiTunesで買った中に深川さんのソロ曲「強がる蕾(つぼみ)」がありました。


乃木坂46 『強がる蕾』Short Ver.

田舎から都会に旅立つ日の、地元の駅のことを歌ったミドルテンポのバラード。上京ソングは世間に数ありますが僕の中で名曲認定されました(笑)。


◆歌詞の絶妙さ
旅立ちの日、駅のホーム。歌詞から察するに誰も見送りに来ていない。けれど「ママに借りたボストンバッグ」とか「頑張れと励ましてくれたみんなの声」とか、親や友人がいないわけではない。曲名からもわかるとおり、少し強がって一人で旅立っていくんですね。その描き方にぐっと来ました。

☆歌詞はこちら 

“不安”と“希望”、“未練”と“振り切る気持ち”。相反する気持ちが居心地悪く同居する旅立ちを、絶妙なバランスで描いてとても素晴らしいなと思いました。

「思い出に負けないように」
「旅立つ日は夢への一歩」
「一人で決めたことを今踏み出そう」

このあたりは乃木坂を卒業するタイミングだった深川さんに当て書きされたようにも思えます。彼女自身が経験した上京もそうだし(親には期限を決めて頑張ってみなさい、ただしお金は自分で稼ぎなさいという条件で許された)、上り調子だった乃木坂を卒業して新しいフィールドに旅立つ姿にもリンクします。


あと技術的にさすがだなぁと思ったのは、

「都会の暮らしに不安と希望入り混ざって
  広がるあの景色が寄せ書きに見えてくる」

のところですね。
旅立つ故郷の風景を描写しつつ、比喩として「寄せ書き」というキーワードを持ってくることで、(1)風景描写、(2)別れという状況説明、そして(3)みんなからの励ましを同時に描くことに成功しているという。これにはやられたーという感じでした。


◆メロディーの仕掛けとコード

音楽的なことも書いておきたいですが、全体的に聴きやすい素直なメロディーです。Kiroroさんが歌っても似合いそうです。ですが1つだけ仕掛けがあって、サビの4小節目、4度#のところです。(サビ2行目 「微笑みながら~」の「え」の音)

キーがCで、曲のスケールにない「ファ#」の音が入っています。それ自体はよくあることで、D7(onF#)もしくはF#-5のコードを当てることでファ→ファ#→ソと階段になります。これによりサブドミナント(F)からドミナント(G)へ気持ちよく盛り上がります。

ただこのファ#がちょっと唐突なんですね。前のミからのファ#で少しだけ距離が遠いというのもあるし(ファ→ファ#→ソだと半音ずつですが、ここでは全音の距離がある)。でもまあ4音も5音も離れているわけではないので距離自体の問題というよりも、「意表をつく」というニュアンスのほうが近いかもしれません。

それまでのメロディーが王道の(言ってみればありがちな)メロディーなので、次の音が読めてしまう。それを逆手にとって、ファにいく予想をファ#にして意外性を持たせているのかなと分析します。(スピッツの「日なたの窓に憧れて」のサビとかも同じパターンです)

頭から終わりまで、ひねりのない地味な曲になるところを、たった1音でしっかりとフックのある曲に仕上げているのですね。僕は地味な曲は地味なまま、かたや凝りたい曲は頭でっかちになる傾向があるので、こういうちょっとしたアイデアで曲のアクセントになるというのは参考にしたいなあと思いました。

【追記】 ちなみにサブドミナント(F)→ドミナント(G)にと書きましたが、ここではE7に展開しています。これはキーCの並行調Amに対するドミナントになっているのですね。


◆アレンジとボーカル
アレンジ的には、ピアノ入りのバンドにストリングスが入って、ささやかな前半から次第にドラマチックになっていきます。また別記事で書こうと思いますが、ストリングス・ピアノ・バンドの組み合わせが乃木坂には多くて、それがとても世界観に合っています。僕もちょうど自分の録音でストリングスの勉強をしていたところだったので、大いに勉強になりました。

ちなみに後半盛り上がるところでストリングスに埋もれながら、ピアノが実は熱くオカズを入れているのですが、それをイヤホンで聴き分けると興奮します(笑)


そして何といっても深川さんの声質ですね。「アイドル声」というのですかね?(でもあざとい感じや、きゃぴきゃぴした寒い感じはなく)、倍音を多く含んでいてとてもいい声なのです。しゃべり声そのままの声ですね。

前記事「やさしさなら間に合ってる」の1人ずつ交代で歌っていくところでも、メンバーそれぞれの個性が際立っていると力説しましたが、中でも深川→西野のBメロ後半部分は一番の聴き所かと。(Perfumeで言うところの、かしゆか→のっちへという構図に相似していると勝手に思っていますが...たとえが雑ですかね笑)


◆さらなる活躍に期待
深川さんは2016年に乃木坂を卒業すると決めたとき、次の事務所が決まっていなかったそうです。聖母とニックネームが付くような穏やかなキャラクター、幾多の「いいひとエピソード」がある彼女ですが、思い立ったら動くというダイナミックさも持ち合わせているみたいです。

(先日の番組内で身体を張ったチャレンジでも難易度のあえて高い選択をしていました。失敗に終わったけど番組の山場を作っていました)。 


【元乃木坂46】ZIP!「ハックツ!」深川麻衣 特集

zipで特集されたときに(↑)、舞台のリハーサルで力及ばず涙する場面が映されていましたが、それにめげずに努力して今の演技力や柔軟な対応力を身につけたのではないかと思います。


2017年、初主演にして第10回TAMA映画賞 最優秀新進女優賞を受賞した映画『パンとバスと2度目のハツコイ』をまだ観れていないので、時間ができ次第レンタルして来ようと思っています。(監督は「愛がなんだ」、そして現在公開中の「アイネクライネナハトムジーク」の今泉力哉監督)

 

初期乃木坂の“顔”であった生駒ちゃんが卒業後多方面で活躍することで、メンバーや他の卒業生の「道筋」を作っている、と書いている人がいましたが、それよりも2年早く(主要メンバーでは初の)卒業となった深川さんがこうやって実力を身につけ、結果を出し続けているというのは、乃木坂を卒業するメンバー・卒業したメンバーの大きな希望になるような気がします。

「強がる蕾」とともにリリースされた「ハルジオンが咲く頃」(こちらがシングルのリード曲)で、ハルジオンに例えられた主人公が、

君も季節が変わればいなくなるとわかってる(略)
次に会えるのはまた新たな夢を見て
今より綺麗な花 咲かせるだろう

と歌われています。乃木坂という場所を離れて、新しい場所でこれからどんどん花を咲かせていく予感がしている、そう思うのはファン目線の空回りでしょうか。期待したい反面、大ブレイクしたらすこし寂しく思ってしまうのもファン心理です苦笑


information
【release】

●現在新作をレコーディング中です。
  別ブログ「大森元気の制作日誌」随時更新中。

●自主レーベル10周年&大森元気30代を総括するbest盤
  『メランコリー OOMORIGENKI 2009-2018 BEST』 発売中
現在はライブ会場&通販にて購入可。→こちらから
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【live】
決まり次第お知らせします。
音源が完成したらもう少し頻繁にやりたいなと思っています。
お誘いもお待ちしています!

【works】
現在全国公開中 映画嵐電」(らんでん)
(監督=鈴木卓爾/主演=井浦新/音楽=あがた森魚
あがた森魚によるエンディングテーマにコーラスで参加しています。