日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

「それは想像のストーリーなどではない」初恋の嵐の思い出と捻れた想い【動画シリーズ7月(2)】

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初恋の嵐 メジャーデビュー・残像カフェ インディーデビュー

日付を見て誰かの誕生日を思い出すみたいに、思い出深いライブのことやリリースの日だったなと思い出すことがよくあります。

その中でも7月10日は、僕ら残像カフェが初の全国流通盤をリリースさせてもらった日として記憶に残っています。そしてこの日は、今や伝説のバンドとなった”初恋の嵐”のメジャーデビューシングル「真夏の夜の事」が発売された日でもありました。

お店によっては平台展開で一緒に並べてもらえた店舗もあって、本当嬉しかったですね...。

初恋の嵐との共通点、ちょっとだけ身近な先輩バンド

西山君(先輩ですが君付けで呼ばせてください)が急逝したあとの初恋の嵐は、何人かのゲストボーカルやサポートメンバーを加えて大所帯でライブを行いましたが、もともとはスリーピースのバンドでした。僕ら残像カフェも同じスリーピースで、なんとなく音楽性や好きなアーティストも近かったので勝手に親近感を抱いていました。

さらに西山君が並行して活動していたバンド「コモンビル」は残像と同じレーベル(Coa Records)から出ていたり、そのCoa Recordsの母体であるデザイン事務所Coa Graphicsが初恋のジャケットのデザインを担当したりと、初恋の嵐は尊敬する存在であると同時に割合近いところにいる先輩でもありました。

自分たちも頑張っていればいつか頻繁に共演できるようになって、飲んだり語ったりできるのだ、その日はやがて来るだろうと勝手ながら思っていたのです。

訃報

程なくして、訃報。
結局初恋の嵐と対バンできたのはたった1回きりとなってしまいました(2001年12月27日@新宿ロフトにて)。複数のバンドが出演するイベントだったし、残像はまだファンもついてない頃で、初めての大舞台ということもあり、空き時間や打ち上げで出演者と積極的に交流することはできなかったのでした。

しかしそんな中おぼろげながら覚えているのは、残像カフェのリハーサルを西山君が見てくれて何か感想を言っていたような記憶があるのです。僕らは演奏してたので何と言っていたかはわからなかったのですが。

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当時の空気感と初恋の嵐の挑戦

今ではリアリティがなさすぎてあまり伝わらないかもしれませんが、当時のシーンには分かりやすいものや、ひねくれてないものは恥ずかしいという空気がありました(...ぼくの周りだけだったかもしれませんが)。売れ線=媚びている的な。アングラやサブカル渋谷系やそういう名残だったのかも知れません。

その空気を破ったバンドの1つが、少なくとも僕の認識では初恋の嵐でした。(あとはキンモクセイが紅白に出たりとか、数年後にはフジファブリックスキマスイッチがお茶の間レベルでブレイクしたりとかありましたが)

インディーからメジャーになるくらいの時期。初恋の嵐は明らかに変わろうとしていました。バンド感を大事にしつつもスリーピースでのアレンジにこだわらず、鍵盤や、音源ではストリングスも積極的に取り入れました。ギターの音色やプレイスタイルも、それまでの荒々しいラフなものからクリーントーンに近いポップな印象のものが増えていきます。

インディー盤にはアドリブで長尺セッションを展開するニールヤング的な曲もあったり、3人「せーの」で出した空気感やグルーヴを重視していた印象がありますが、そこから新しい場所へ向かったことは明らか。(多分僕の記憶が正しければインタビューでも言っていたかと思います)

バラードやミドルテンポの曲が多かった彼らですが、死後リリースされたアルバム1曲目の「初恋に捧ぐ」は若い頃の福山雅治さんの曲を彷彿とさせるような、ポップでアップテンポな曲でした。(本当は先行シングルの予定だったそうです)そういうことでも変化の姿勢が見て取れます。

それまでの風潮やこだわりを壊すことも恐れず、正しいと思うことに突き進む。変化していく彼らの姿が清々しかったのです。

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逝去後制作された作品たち

前述の通り、初恋の嵐のメジャーデビューが決まっていながら、制作半ばにして西山君が急逝。アルバムと先行シングルは、残されたメンバーとゲストミュージシャンによって作り上げられました。

歌声は仮歌を使用しているそうですが、全曲とも見事な歌唱なのです。これには当時も今も衝撃を受け続けています。

歌詞を直していたせいでしょうか、アルバム先行のシングルは「初恋に捧ぐ」から「真夏の夜の事」に変更となりました。2002年7月10日、かくしてそれはリリースされました。

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捻(ねじ)れた想い

僕がそのあと出会う色んなミュージシャンの中には、西山君と仲の良かった人たちがたくさんいます。彼が生きていたら、僕が頑張っていたら、そのうちの1人になれたのかなと叶わぬ思いを馳せます。

昔、とある人に酔った勢いで「残像には初恋の意思を継いでほしい」なんて言われたこともありましたが、そうなれたらいいなという気持ちと、おこがましさと、力不足の不甲斐なさと...。

そういったいろいろな切なさと悔しさをごちゃまぜにして、初恋の嵐は今も音源のなかに生き続けています。

音源を聴けば、バンドの雰囲気や、その中で歌う彼の声、癖や息づかい、抑揚、独特な声の震えがそこにあります。それらはまるで西山君がすぐそこにいるような生生しさで、いきいきと聴こえてくるのです。

初恋の嵐の音楽を伝え続けるべく、信念を持って演奏したりライブに足を運んだたくさんの人たち、特にメンバーの皆さん。彼らに敬意を表し、同時に心から申し訳ないと思いつつも、僕はチャンスがあったのに西山君のいないライブをとうとう1度も観に行くことがありませんでした。

自分の努力や実績が足りずゲストボーカルの1人になれなかった悔しさもないと言ったら嘘になるけれど、やっぱり西山君のいない初恋の嵐を観る勇気がずっとないままなのです。

「♪刻まれることを夢見てた」

これは「真夏の夜の事」の2曲目やコンピレーションに収録されていた「涙の旅路」の歌詞ですが、その言葉どおり、初恋の嵐は永遠に日本の音楽シーン、そしてファンの心に刻まれ続けていくことと思います。

youtu.be

「真夏の夜の事」
Performed by 残像のブーケ(a.k.a.大森元気)
2021.7.10公開
Written by 西山達郎
Original Release:
初恋の嵐 Sg「真夏の夜の事」
・Ab『初恋に捧ぐ』(2002)

◆弾き語り動画シリーズ(一覧ページ)はこちら

 

information 


大森元気(ex残像カフェ/花と路地)は「残像のブーケ」というソロプロジェクト名で2020年心機一転始動しました。

【News / Release】
◆20.12.24 アルバム先行 第2弾「boys&girls」期間限定デジタルリリース
・Trailer映像▶こちら
・各サブスクへのリンクページ▶こちら

◆20.6.12 残像のブーケ初リリース曲「ぼくの愛する暮らし」参加コンピリリース
・MVつくりました▶ こちら
・各サブスクへのリンクページ▶こちら
※再生していただくだけでコロナ禍打撃店舗への支援収益となります

Youtubeチャンネルにて自宅で歌うセルフカバーシリーズ公開中。弾き語りシリーズ不定期更新中。

【Live】
20.8 残像カフェ10年ぶり再集結終了。ありがとうございました。
残像のブーケおよびサポート参加ライブは決まり次第お知らせします

【OtherWorks】
あがた森魚2020年アルバム『浦島2020』に2曲コーラスで参加
あがた森魚2019年アルバム『観光おみやげ第三惑星』複数曲にコーラスで参加
・2019年公開より1年以上今なおロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚)エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。
・「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。