日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

「今宵&みゅーじっく」のすべて

先日の10年ぶりライブから、「日なたにて」の抜粋バージョンに続き「今宵&みゅーじっく」が公開になりました。こちらはフル尺です。

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◆3人とも歌うアイデア
「今宵&みゅーじっく」は2003年発売の2ndアルバムに収録されていて、アルバムタイトルにもなっている曲です。

動画を観てもらえばわかるとおり1番2番3番と、メンバーが順番にリードボーカルを取っていきます。これ実は2002年に初披露したときライブの数日前(もしかしたら前日?)に思いついたアイデアでした。

僕が幼い頃から親しんだ“かぐや姫”みたいなバンドを新しいロックの形でやりたいと思ってのことでした。曲調は違いますが。メンバーは柔軟に対応してくれましたがもっと早めに思いついてくれよ!と言いたかったことでしょう笑


◆1stの呪縛?

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残像カフェはその前年に1stが出て、曲調もさやわかなものが多かったし僕のボーカルも今より細く不安定だったので、そういう割と文学青年...ではないけれど、なよなよしたイメージを持たれることが多かったです。

もちろんその良さもあったし、そういうバンドが好きな人も多かったのでそれはそれとして受け止めていますが(僕自身全曲好きです)、僕ら的にはライブは爆音だったし、1stより前はサイケやブルージーなものもやっていたので1stの反応は嬉しさ半分、もう半分は「これだけじゃないんだけどなぁ」という気持ちでした。


◆1stと2ndの過渡期「キッチン(競演バージョン)」での暴挙

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そんな流れで1stのあとはちょっと流れに反発するような気持ちがありましたね。違うものをやりたい、本当の自分たちを見せたいというか。

2ndの前に「キッチン」の競演バージョンというのがありました。Aメロは完全にブルース、ギターも歪みまくっていて、演奏もせーので録った勢いまかせの粗い曲なのですが、これをフジファブリック・タイライクヤとの3曲入りスプリットシングルに収録してしまったのだから相当な冒険(暴挙?)だったと思います。事務所もよく許しましたねぇ。「1stと違う俺たちを見せたい!」みたいな、それしか考えてなかった気がしますね。

(『競演』は入手困難となっていますが、同じバージョンのモノミックスがベスト盤『センチメンタル』に収録されています)。
 


◆収録されなかった曲たち
同時期に「星祭り」や「六月」という、メロディーやサウンド寄りの新曲も披露していましたが2ndアルバムにはあえて収録しませんでした(ともに3rdに収録)。これは僕らの意向だったはずです。事務所的には本当は入れたかったと後から聞きました。

それくらい2ndアルバムは方向性をがっつりと絞った作品にしたいという気持ちがあったと思います。僕だけだったのかなぁ。

今考えれば「六月」は曲調的には違和感はなかったはずですが、歌詞の季節感ですね。アルバムの雰囲気的に「秋」感を出したくて僕が候補リストに入れていなかったのだと思います。初期からあった「きみのいる春の景色」(4thに収録)を入れなかったのも同じ理由でしょう。皮肉なことにリリースされたのは春も春、3月でしたが(苦笑)

余談ですが一番ヘヴィーでブルージーだった初期曲「悲しき夏バテ」(未発表)を入れようと思わなかったのは今となれば不思議です。爆音で長尺のブルースナンバー。自分たちでもさすがに重すぎると判断したのでしょうか。

渋い曲が多いけど9曲入り(うち2曲は短い曲)というのは今思えば絶妙なバランスだったのかもしれません。


◆ルーツミュージックの探求と昇華
そんなふうにして1stのイメージを覆すために僕らは以前より取り組んでいた60〜70年代ロック、ブルース、サイケ的な要素に加え、次に向かう境地として僕がハマり始めていたボブ・ディランや澤田君が聴いていたドクタージョンやニューオリンズファンクなど──便宜上ひとまとめに「ルーツミュージック」という書き方でプロモーションしていましたが──土臭く、地に足のついたロックを自分たちなりに昇華してアルバムを作ってみたいという気持ちがありました。

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2ndのキーとなった曲はディランからヒントを得た「自己嫌悪のブルース」(「♪間違った〜間違った〜」を英語っぽく連呼する部分はコモンビルや後述するmoo-Chiesの影響もあったと思います)、そして同じくアルバムのキーとなったのが「今宵&みゅーじっく」でした。



はっぴいえんど〜「今宵&みゅーじっく」(そしてハナレグミ
この曲は上でも書いたドクタージョン〜ニューオリンズで多用される「セカンドライン」というリズムパターンに挑戦しています。

僕は大学時代からはっぴいえんどにかなり傾倒していましたが、初期やライブ盤が好きだったので後期やソロ作は最初の頃あまり聴いていませんでした。けれどこの頃になるとソロも好きになり、細野さんや大瀧さんもこのセカンドラインを取り入れていることを知り(おそらく日本に紹介したのがこの2名なのだと思いますが)、自分たちもこんな曲を作ってみたい!と思ったのだと思います。時同じくして澤田君がドクタージョンを教えてくれて「これが元ネタか!」となりました。

ちなみに直後にハナレグミこと永積さんが「Wake Upしてください」という、完全に同じ方向で名曲をリリースしてしまい、かぶった!となりました。ハナレグミに関しては彼の「音タイム」という曲と僕が南風という大所帯バンドで録った「忘れる季節」がイントロからほぼ完全にだだかぶりだったので悔しい思いを2度もすることになりました。。


◆moo-Chies先輩
話が逸れてしまいましたがそんなニューオリンズのビートを借りた「今宵&みゅーじっく」そして新アレンジの「キッチン」の転げ回るようなピアノはmoo-Chies(ムーチーズ)のかちむつみ氏に弾いてもらいました。

moo-Chiesは残像初期の頃に澤田君の紹介で知り合ったバンド。ピアノトリオ形態でブラックミュージックやソウルミュージックなどを親しみやすいポップな形でオリジナルに変換していてすぐにファンになりました。(荒井良二さんによるジャケットも大好きです)

ライブにもずいぶん通ったし競演も何度かさせてもらいました。そうこうするうちに2ndアルバムのレコーディングをする段になり、かちさんにお願いしてみることにしました。当時残像にはサポート鍵盤もいなかったし、ドクタージョンみたいな鍵盤をここまで完璧に自分のものとして弾ける人がいるんだ!と。それを目の前で見ることができて本当に興奮しましたねぇ。


◆2ndアルバムの残したもの、バンドのアイデンティティ
2ndはそんな方向性のアルバムだったので事務所やメーカー的にはやはり渋かったのでしょう、ほかの作品では権利の管理やプロモーションも数社でしてもらえましたが、この作品だけcoa records単体での扱いとなりました。coa records的にも「ドキュメンタリーアルバム」「ベーシックは一発録り」みたいな言葉を使って、なるべくいつもの感じではないスペシャル感を出すのに苦労していたようです。

ちなみに全体の音の感じが他のアルバムと違うと思うのですが、これもこだわりでほとんどすべてをA-dat(エーダット)で録りました。ビデオテープみたいなやつですね。時代はもちろんプロトゥールスなどPCでの録音が主流でしたがあえてこだわりましたね。録音時の調整やミックスでもなるべく60〜70年代前半の感じでとリクエストをしてこうなりました。

そんな世間の流れ無視のとにかく異質なアルバムでした。ただありがたいことに1stリリース時よりいろんなところで話題にしてもらい、スプリットシングルでフジファブリックの力もあり1位になったりして、一定の音楽ファンから注目されていたことは確かでした。

そこに予想と全然違うこの渋いアルバムがどん!と出て、みんなどう思ったのかな。今ではわかりません。けどあまり悪い声は聞こえてこなかったような気がします。お客さんが減ったということも全然なかったです。みんな受け入れてくれたし、特にミュージシャン仲間は褒めてくれる人が多かったですね。今でも好きだと言ってくれる人が多いです。

売上枚数は僕は知らないのですが、たとえメーカーがつかず、セールス的にふるわなかったとしても、そして内容が地味だったとしても、このアルバムは作ってよかったしバンドにとって作る必要があったのだと断言できます。このアルバムがあったからこそバンドが本当に見ていたものとか、本当の持ち味を知ってもらえた気がするし、ミーハーでない音楽ファンからも少しは信頼されたような気もするし、いわばバンドのアイデンティティを提示できたかなと思うのです。


◆再会はいつも「今宵&みゅーじっく」
残像カフェが解散ライブをしたのが今から10年前の2010年3月でした。その5年前にすでにメンバーは脱退していてその後のサポート〜新メンバー体制も終了していたので、最後にオリジナルメンバーでライブをして残像カフェを終了しようということにしました。久しぶりに集まったオリジナルメンバー。「解散」だったけど「再会」の意味のほうが大きかったですね。

ムーンライダースに移行して解散ライブをしていなかったはちみつぱいの1985年の再会・解散ライブに勝手に重ねたりして)

そのライブのタイトルは「今宵&みゅーじっく」でした。これは2nd発売のときのレコ発ライブのタイトルでもあったし、みんな再会してわいわいやりたいな、賑やかな夜になったらなという気分が反映されていたと思います。

10年経って今年。ひょんなことからまた集結することになりました。今回もそのタイトルを継承して「今宵&みゅーじっく 2020 feat.超夏祭り」と名付けました。(超夏祭りについては前記事参照)

さあいよいよあさってです。賑やかで楽しい夜にしたいです。

「♪ねえ ちょっとちょっと思ってよ
   よかった感じを よかった日を〜」


繰り返しのお知らせになりますが配信チケットはお早目の購入をおすすめします(直前でも大丈夫ですが)

 

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2020.8.23 (SUN)
月見ルリニューアル記念
“今宵&みゅーじっく2020 feat.超夏祭り”
at 青山 月見ル君想フ
*本公演は月見ル君想フのオリジナル配信サービス MoonRomantic Channelよりお送りします。
https://www.moonromantic-channel.com/
【start】 19:00予定
【配信TICKET】¥2,000(投げ銭特典あり)
投げ銭をしてくださった皆様に
・特製メッセージカード(画像データ)
・当日のライブ録音 数曲 をプレゼント

*19:30頃より小金井市有志による「まちかど超夏祭り」YOUTUBE中継あり
*出演メンバー:残像カフェ+みんみん
*夏祭りゲスト:伊藤哲朗(fr.ROCCO)松田恵子(fr.ムジカラグー)ほか

月見ル君想フ http://www.moonromantic.com/
まちかど超夏祭り https://www.mykougu.com/