日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

11月リリース「潮騒」制作秘話あれこれ

ライブを挟んだので新曲リリースについてあまり書かずにきてしまいました。少し書いてみたいと思います。

11月17日、制作中のアルバムから先行シングルとして潮騒という曲を配信リリースしました。本当は夏のうちに出したかったのですが結局11月になりました。

※この記事の一番下にYOUTUBE(静止画版)を貼っていますのでサブスクやってなくてもお聴き頂けます。

文字数が少ない=作詞が激ムズ

テンポ的にはミドルテンポってことになるのかな。歌メロの音数が少なく、伸ばす音が多いので実際のテンポよりもゆったりした印象を受けるかも知れません。

この「歌メロの音数が少ない」というのは自分にとってかなりの難題でした。曲はすんなり出来ましたが歌詞がハマらない...。そして内容が深まらない....。

僕はいつもいろんな情景をちょっとずつ書いていってそれらを積み重ねてストーリーにしていくという書き方をします。要するに文字数を多めに必要とするんですね。それが今回はたった11行。いつも1コーラスだけでこれくらいは行っちゃいます。下手したらサビに行く前に11行超えることも。

こうなると自分の中では「作文」と「俳句」くらいの違いがありましたね。で、抽象的な言葉で終わらせるとか、物語は書かずに感情やセリフみたいな感じで書くとかならまだしも、物語まで描きたかったのでさらに難易度が増しました。

1つの文で相反する2つの意味を

大枠が出来たあと2~3か所だけどうしても出てこない箇所があって。ここ数年の僕のお決まりのパターンですがその数か所のために何週間も数か月も悩むという。

春ごろにSNSでも書きましたが、何パターンも言葉を探しては当てはめていくその中で良いと思える言葉が浮かぶと別の場所も変えたくなり、それに伴って全体のストーリーまで変わってしまう、なんていうことも起こりました。

一番ラストのフレーズも悩んだ箇所の1つです。歌ったときに気持ちいいということ、そしてストーリーの”締め”ということでどんどんハードルが上がっていて。

「♪夏を残して列車は走るよ」

これを思いついて。自分で説明するのもどうかと思いますが「夏を(海に)残して」という意味と「夏(の香り)が残る列車」という2つの解釈ができるようになっています。

前者ととれば、夏は海に置いてそこから日々に帰っていく(=自分は夏を諦めた)ということになります。逆に後者ととれば、まだ夏の香りが残っている列車(=帰路についているけれど未練がある)ということになるんですね。

1つのフレーズで相反する2つの意味合いを込めることができたので、自分としては浮かんだ時「これだ!」と思いました。まぁ、一見なにげない言葉なのでそこまで気づく人はあんまりいないと思いますが。(そして解釈は自由です)

 

どんなストーリー?謎解きのように

いつもストーリーをどうするかあまり決めないで書き始めるので、すでに決まったフレーズをヒントに穴埋めや謎解きみたいに想像してどんなストーリーなのか探していくような感じです。今回もそうでした。

サビの「渚 歩きながら~」という歌詞、設定としては“海から帰っている”ことと、”君の返事を待ってる”ということ。それだけ決まっていて、あとどうするよ?と。

◉恋が終わるのにどうして2人で海に来た?

◉一緒に来たのに別々で帰っているのはなぜ?

◉付き合ってないことにする?(それだと一緒に海に来るかなあー)

◉今回は1人という設定は?一緒に旅したときのことを思い出してる。(良さそうだが文字数が足りないか)

◉ほかには実はまだ列車には乗っていなくて海岸沿いを走るバスに乗って駅に戻っているところという設定も考えたけど、バス→電車とかややこしいな...11行では無理!

結局、いろいろを明確にしないことにしました。君と一緒だったのかそれとも1人だったのかは断定せず。返事を待っている理由も、いま君がどこにいるかもあえて書かずに。

完成後にした大改造〜春樹再読で

ダメ押しとして最後、その頃にはすでに歌詞を書きあげていたのですがさらに別の設定を思いつきます。

◉「君」はもう死んでいて、思い出の場所を毎年訪ねている、その帰りの話

その新設定で大幅に書き直したりもしました。

結局書いてからやめたのですが、これは前項で書いたいくつかの設定の無理や矛盾をいっきに解決する糸口に思えたので最初はグッドアイデアと思えました。

でも死んでしまうとやはりちょっと重くてやめました。そういう歌もいいけれど今回は構想中のアルバムの曲順とかも合わせて考えた末、まあ普通のラブソングにしておこうと。

ちなみに歌詞は戻したけれど、死んでしまったという設定で聴くことも可能です。

蛇足になりますが、この恋人が死んでいるという設定は村上春樹氏の「1973年のピンボール」を久しぶりに読み返したことで思いついたアイデアでした。

行間で読んでもらうということ、想像してもらうということ

そんなこんなで、だいたいの形は春には完成していたにもかかわらず8月くらいまでいろいろ試行錯誤しました。

結局最後は少々の設定の無理は気にしないことにして、あとは前述のとおり、あえてぼかして、行間でいろいろ想像してもらおうと。

1つの答えを押し付けなくてもいいということ。それは自分としては忘れがちなことですが、大事なことです。そう考えると少し楽になりました。

追記

タイトルは「潮騒」と「渚にて」もしくは「渚」あたりで迷いました。

「渚」はスピッツ、「渚にて」はニールヤングとか映画とか色々想起したので「潮騒」に。潮騒もたくさんの人が名付けていますが渚にてよりも匿名性があるかなと思い。

 

僕なりのAORブームとリリースに込めた想い

歌詞のことを長々と書きましたが音楽的なことも書いておきたいです。

曲調としては僕が1stアルバム(昨年の春発売)以降に取り組んでいる「自分なりのシティ~AOR」の流れを汲んでいます。

グルーヴ的なものではなくコードの使い方とかアレンジとかなので特にファンキーだったりはしないのですが。

乱暴に言えば敬愛する伊勢正三氏がフォークからAOR化した1980年代の作品群へのリスペクトをふんだんに取り入れています。(メロディーの引用などはありませんが雰囲気的なことです)

メジャーセブンス系のコードをふんだんに使用して、ちょっとアンニュイでノスタルジックな風が吹いているのを感じとってもらえたらと。

あとAORとは関係ないですがサビをファルセットにしたのはちょっとした冒険です。キーを下げて地声でしっかり出すデモも作ってみて、それはそれで気持ちよかったのですが全体を聴いてみてこのキーのほうが曲に合っていると思えたので。

ばっと聴きの印象は地味でシングル向けではない曲だと思います。けれど意思をもってこの曲を配信することにしました。

それは「今こういうマイブームにいるんだよ」という姿勢の提示であるし、構想中のアルバムの予告編みたいな。導入的な役割としてこの曲をまずリリースしておきたい、というのがありました。

渾身のギターソロ

そしてギターソロ。これ、個人的にはとても気に入っています。

これもここ数年のマイブームで、音は歪ませ過ぎずコンプをかけることで得られる音色。フレーズも、ブルーノートなどの手癖ではなくカントリーやシティポップなどの要素を取り入れたり、ダブル・ストップ(単音でなく和音の奏法)で弾いたり、チョーキングもペダルスチールやベンダー風のニュアンスで。そんなアプローチになっています(後半はちょっと手癖も入っていますが)。

同様のスタイルは「ナツノユメ」「夏の星座2022」「メランコリー」「涙が出ちゃうよ」などでもチャレンジしてきました。徳武弘文氏、鈴木茂氏、エイモス・ギャレット氏、先日惜しくも亡くなったロビー・ロバートソン氏。そのあたりの御大への憧れを自分なりに解釈して(簡単にして)弾いている感じです。

そしてこれを書いている12月はジョージ・ハリスンのマイブームで、彼の曲や声はもちろん、独特なタッチのギターにも魅了されています。フレーズも最高だけどタッチが唯一無二だなと!

これらの名手たちのスタイルに今夢中で。少しでも自分のものにしていきたいと思っています。

蛇足。このソロ中のドラムのオカズは何十回も直しました。2週間くらい微修正しつづけてた記憶が。やりすぎると邪魔だし無いと寂しくて。

 

マサキング氏のベース

ベースを忘れてはいけません。ライブも手伝ってくれているマサキングこと木下正樹くんに弾いてもらいました。

1stアルバムのときはまだ一緒にやっていなかったし、その後の配信シングル2曲は僕が弾いたので今回が音源初参加になりました。

ほかのパートは全部自分で弾いたり打ち込みしたりしたので、参加メンバーはマサキングのみ。だからなんか「2人で作り上げた感」がありますね。

遠隔で何日もやりとりしながらリクエストを出したり、提案してもらったり。とても良いものが出来ました。自分では思いつかないフレーズも出てくるし、やっぱり全部1人で作りよりも断然深みや立体感が出てきますね。人とやるのって大切だなあと。

共同ミックスとマスタリングのアダチヨウスケ氏にも毎度毎度感謝です。

 

曽我部さんに届いた!

長くなりましたが、最後にもう1つだけ書かせてください。
曽我部恵一さんがこの曲を聴いてくれて、褒めてくれたんです。

配信リリースがスタートした11/16から17に日付が変わった深夜遅くのことでした。配信日をぎりぎりに設定してしまったせいで日付が変わってもストアによって配信が開始していたりしていなかったりという状況でした。なので、すべて開始になるのを待ってから翌日ちゃんと告知をしようと思っていたのですが、待ちきれずまぁ深夜だしということでフライング的にこっそりSNSで告知してみました。

それに早速いいねをくれたのが曽我部さんだったのです。目が覚める衝撃でしたね。

でもそのときはリリース情報だから応援の意味で形式的にいいねをくれたのだと思っていました。

その2日後イベントでご一緒して、ライブは観れたのですがお話するタイミングがなかったので翌日メールをしてみました。そうしたらなんと曲を実際に聴いてくれていて「素晴らしい出来だね」と言ってくれたのでした。てっきり聴かずに形式的にいいねをくれただけだと思ってたから感激でした。

.....という自己満足 & 自慢でしたすみません笑。

 

制作は続きます

夏の楽曲でリリース時すでに季節はずれだったし、あんまり告知もちゃんとできてなかったのでまだ未聴の方はよかったら聴いてもらえたら嬉しいです。

そして次の曲もいま鋭意作業中です!ほんとは年内に完成させたかったけど多分1月になると思いますがまた配信でリリースする予定です。

潮騒」とはあえて違うタイプの曲を選んだのでそちらも楽しみにしてもらえたら嬉しいです。

アルバムは....気長にお待ちください苦笑。

 

youtu.be

残像のブーケ
配信シングル「潮騒

2023年11月17日 配信リリース
OURLIFE MUSIC OLMD-022

◉各配信ストア https://linkco.re/pFUA8zGn

 

Written by 大森元気
Vocals, All Instruments(except Ba) & Programming 大森元気
Bass 木下正樹

Rec 大森元気
Mix  アダチヨウスケ&大森元気
Mastering アダチヨウスケ

 

残像のブーケ、現在構想中の2ndアルバムより先行配信リリース決定!

残像のブーケが届けるノスタルジックな夏の忘れ物。
季節の終わり。恋の終わり。
日常に戻る列車に揺られながら、
耳の奥に鳴り続ける潮騒

海と夏と恋をテーマにした現在構想中のアルバムからの先行リリース。
メロウなサウンドの中に1stアルバム以降残像のブーケが向かっている方向性が表れている。
まだ見ぬアルバムの片鱗に耳を澄まそう。

 

 

Information 


【Live Schedule】
■決まり次第お知らせします。
■パンと音楽とアンティーク2023 
ご来場の皆様ありがとうございました。セルフレポ(写真多数)公開しました。動画も後日アップ予定。
 

【News / Release】
■Sg「潮騒」11/17 配信リリース

各配信ストア
構想中のアルバムから先行Sg配信リリースしました

■「残像のブーケ」1stアルバム 2023.4.12全国発売
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2022年春にオンラインショップ・ライブ会場・配信のみでリリースした1stアルバムが遂に全国流通開始。
〔CD〕
 全国主要レコード店 および OURLIFE MUSIC WebShopにて購入可
〔配信〕
 各配信ストア一覧ページ→こちら

<全曲ダイジェスト>youtubeに公開中→こちら 
その他ティザー動画(×6)あり

■2022夏2か月連続デジタルリリース「ナツノユメ」

 配信ストア一覧
■2022夏2か月連続デジタルリリース「夏の星座」残像カフェ楽曲のリメイク)
 配信ストア一覧

【OtherWorks】
■楽曲提供
2021年11月発売、RISA COOPERこと岡田梨沙のソロアルバムに1曲楽曲提供しました→特設ページ / 全曲Teaser動画

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■コーラス他で参加
あがた森魚 2013年~2021年多数のアルバムにChoで参加しています。またライブも不定期でサポート参加中(Cho,AG,EG)

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■コーラスで参加
2019年公開よりロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚)エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。

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■映画音楽
「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。(同監督とは過去2作品でも提供しています)