日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

ベスト盤 全曲解説 (後編) 打ち込み没頭期が残したもの/東京と故郷で揺れ動きながら ほか

配信解禁&ダイジェスト公開記念 全曲解説 その3(完結編)です。

◉公開済み分
>>前編「自作MVに初挑戦 ほか」
>>中編「花と路地のこと、アルバムタイトルのこと、髭。」


◉ダイジェストムービーはこちら。ぜひ聴いてみてください!


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「Noah(2018mix)」

2014年、自分の音楽人生に大きな事件が起こります。Perfumeを初めとした中田ヤスタカ関連の作品に突如ハマリました。

それだけならまだしも、それまで慣れ親しんできたロックやフォークやカントリーミュージックを一時的に排除したいモードに。もちろん一時的ってことは自分でも分かっていつつ、ここまで大きな気持ちの変化が訪れることって人生そうそうあることではないので、ブレーキをかけずに振り切るだけ振り切ってみようと考えたのでした。(偶然か、メンバーが予兆を察してか、バンド花と路地は休止になろうとしているタイミングでした)


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このとき↑は今回のベスト盤と違うミックス(アレンジ)になっています。

ブログとネット販売を融合したSNS「note」がちょうど出始めたばかりの頃で、そこで何度もミックスを更新して、そのつど販売したりという試みもしていましたね。


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上に貼ったのは、PCとMIDIコントローラー(ミニ鍵盤)を持ち込み、全曲打ち込みで臨んだ実験的ライブのダイジェスト。既述のとおり賛否両論でもいいから「振り切れるだけ振り切ろう」「今までと違えば違うほどいい」というモードだったので、それをライブにも反映させてみたいと思ったのでした。

ただボーカルは音源と違って無加工だったことや、鍵盤にしてももう少しダンスミュージック的なアプローチを有機的な形で出来ればよかったなと。このときはまだ「オケを流しながら歌う、楽器もちょっと弾く」レベルの方法だったので、もうちょっといきたいなとは思っていました(それがこのスタイルを継続できなかった理由の1つでもあるのですが)。とは言え僕を知っている人からしたらインパクト充分だったと思います。


当時のアー写。似合ってるか微妙ですが珍しく派手めなシャツと背景とで撮影しました。

そんな2014年でしたが4年後の2018年、ベスト盤を作るにあたり、直球すぎる要素を減らす形で、アレンジを変えベスト盤のみのバージョンを新たに制作しました。今(2022年)、2014年のバージョンはちょっと気恥ずかしい部分もありますが、2018年バージョンのほうは割と楽しんで聴ける自分がいます。

リスナーにもそういう方がけっこういらっしゃるみたいで、今回配信解禁してみると予想以上に再生数が伸びています。時間が経ってファンの方に受け入れてもらえたのか、新アレンジがよかったのか、リスナー層が変わったのか、知らなかっただけで当時から温かく受け入れられていたのか?....などなど理由はいくつか考えられますが、予想してなかったので嬉しいです。

この曲ほどPerfumeっぽいのはさすがにもう作らないかもしれませんが、自分に合った形でなら、この路線でまた作るのも悪くないなと今回少し思いました。当時と違って、従来の要素を封印する方法ではなく、もう両立や融合が出来るはずだし。


「とおりすぎた街」
これも2014年、打ち込み時代の曲です。Noahよりは大森元気みがあると思いますが、アウトロとかはちょっとPerfume「マカロニ」感あり?


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当時この打ち込みのスタイルで7曲くらい作ったのかな。残像カフェの「白い夏」のリメイクなんかも作りましたね。あと別途コンペ応募用に数曲つくったり。本当はまとめてアルバムにしたかったのですが、結局単発で配信したのみでその時期は過ぎていきました。

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でもこの期間に集中して制作したことで、打ち込みの技術を習得できたことは大きかったです。

そのモードが終わって、この方向性で作らなくなりましたが、生のバンドサウンドに打ち込みを”自然な形で”導入するという、今自分が当たり前にやっていることはこの時期に学んだんですね。今年出したアルバム『残像のブーケ』にも大いに活かされることになりました。そういう意味では全く無駄じゃなかったなと思えます。



「まち」
2013年『君の街 僕の街』収録のバラード。
少し前にデモバージョンがあってその空気感がとても良くて(でも音質はイマイチで)、そのまま使うか録り直しするかで当時かなり迷った記憶があります。結局録り直して正解でした。

デモには録音時に偶然窓の外で鳴いていた鳥の声が入っていて、歌詞とは関係ないけどとてもよかったので再現したいなと。それで新たなバージョンを作るときにもわざわざ録って入れました(ちょっと大きすぎる気もするけれど)。

ペダルスチールは渡瀬賢吾君。それ以外の楽器は全部自分です。ベースはこの時期自分内で流行していた、スポンジでミュートしてウッドベースみたいにする奏法。ベスト盤の中でも「アイスキャンディー」や「雨の中、女の子」などでもこの奏法が聴けます。

ドラムも自分。タイミング等はかなり修正しましたがだいぶ味のある感じです苦笑。このスネアの大きめ&音高めのミックスは礒崎氏の意向によるもの。(RECは大森で、礒崎氏にはMIXのみ依頼しました。残像カフェの音作りになくてはならない存在だった礒崎氏。依頼するのは残像ぶりでした)。

普通だったらこの素人ドラム、馴染む感じで地味にすると思うんですけど、あえて目立たせる音作り。そういうところが礒崎マジックなんだなあと。

ライブのMCではいつも蛇足と思いつつ語ってしまうのですが、住み慣れた街を離れて、久しぶりに訪れる。そうすると自分の街じゃなくなっているように感じる。それは寂しい感情ではあるけれど、だからこそ振り切って前を向けるんじゃないかと。それで歌詞の結びが「他人に見えたよ」から最後「背中を押すんだよ」に変わるんです。そんな歌です。


「インマイライフ」
2013年『君の街 僕の街』収録ですが、ライブでの初演は2006年、20代後半に作った曲です。数回演奏したあと音源化せずライブでもやらなくなって封印状態で7年ほど放置していました。

2013年に久しぶりの故郷ライブ(弾き語りでは上京以来初めて)が決まったことで、故郷にちなんだこの歌を久しぶりに歌い、手応えもあったためこれは音源として残しておきたいと思い録音することを決めました。その勢いでそれがアルバム制作にも繋がって行きました。


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リリースVerより渋めですが弾き語りのバージョン。久しぶりに復活させアルバム制作に繋がった、そのきっかけのライブがこの日です。

これも何度となく語っていますが、この歌は実話が元になっています。高校時代の友人が卒業して約10年後に急逝、そのことで少し距離を置いていた故郷に久しぶりに帰る歌。

上京してからの日々、故郷が嫌いでなく、自分の大事な場所であるからこそなかなか帰る気持ちになれなかった。故郷と東京では気持ちのモードが変わる。それで結果的に”背を向けて頑張る”という構図になっていた。

でも友人の死をきっかけに久しぶりに帰って、かつての友人達とあの頃と同じように語らえた。やはり愛すべき場所だった。

そんなふうに実話よりはカッコつけた歌詞にしていますが、そんな若者ならではの気持ちを吉田拓郎真心ブラザーズ調の曲に乗せて描きました。


「小梅ちゃん(2005×2018)」
デモ(ライブ会場で配布歴あり)に収録していた曲で、ソロや残像カフェ(中期)でも演奏したし、花と路地では毎回のように演奏していたのでライブで耳にした方も多いかもしれません。季節にあわせて数パターンの歌詞を書いたりもして、「七夕編」は花と路地のライブアルバムにも収録済です。


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花と路地での初演テイク。このあとしばらくはライブの定番となり、歌詞も季節に合わせて複数つくりました。

2005年のデモを基本に、加工と若干の追加RECをして今回のバージョンを制作しました。2005年のデモは2種類存在し、ベーシックは同じでストリングス入りというものもあったのですが、キーボード感が目立ってチープな印象を受けたのであえて無しのほうを採用することにしました。このシンプルさもいいなと。

コード進行はザ・ビートルズの「Free As A Bird」と相似していますが、作ったあとで気づきました。日本ぽいフォークのイメージで作ったので自分でも驚きでした。


◉ダイジェスト未収録

「花咲く路地」
前ポスト に書きました。


「ひとりごと」

2013年『君の街 僕の街』収録ですが、2008年頃のデモを使用(音質は調整済)。
アコギでも成立する曲調ですがエピフォンカジノ(ジョンレノンで有名なエレキギター)を指弾きしています。ベスト盤に入れるほどキャッチーな曲ではないけれど、歌詞的にやっぱり入れたかったんですね。(でも今だったら選ばないかなぁ。大事な曲ですがベスト盤って考えると。)

 * * *

というわけで長くなりましたが3回にわけてセルフ解説してみました。

歌詞カードにもライナーノーツは入っていて、今回は4年経っているし、ちょっと違う角度からも書けたらなんて思いながら書き綴ってみましたがいかがでしたでしょうか。(わりと内容かぶっちゃったかもしれませんが...) 

すでに配信で聴いてくださっている方も、フィジカルで何年も聴いてくださっている方も、解説を読みながらまた聴いてもらえると新しい発見があるかも知れません。

まあ本当はですよ、歌の解釈は人それぞれでいいはずなので解説なんて必要ないのですが。


ソロベスト盤
「メランコリーOOMORI GENKI 2009-2018 BEST」

●配信
2021.11.2 解禁 >> 配信ストア一覧

●CDR
2018年 発売 >> OURLIFE MUSIC WebShopにて購入可


さあ、しばらく昔話が続いたので、現在と未来を向きますよ〜。
あ、その前に先日の宇都宮も振り返らないと...(宿題は多い 笑)

 

 

Information 


【News / Release】
◆旧譜(ソロベスト盤)「メランコリーOOMORI GENKI 2009-2018 BEST」11/2配信解禁

配信ストア一覧

◆2か月連続デジタルリリース決定 第2弾「ナツノユメ」9/22解禁

 配信ストア一覧
◆2か月連続デジタルリリース決定 第1弾は8/24解禁、残像カフェのセルフカバー「夏の星座」
 配信ストア一覧
◆「残像のブーケ」1stアルバム好評発売&配信中
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全曲ダイジェスト>youtubeに公開中→こちら 
その他
ティザー動画(×6)あり
◉CD 紙ジャケ仕様、歌詞&セルフライナーノーツ付
 OURLIFE MUSIC WebShopにて購入可
◉配信 各配信ストア一覧ページ→こちら

◆過去作品『君の街 僕の街』
配信解禁 & 収録曲から新たに「イツカノハル」リリックビデオ公開
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・「イツカノハル」リリックビデオ▶︎こちら
・『君の街 僕の街』サブスク各社リンク一覧▶︎こちら


【Live Schedule】>>スケジュールページ
宇都宮2daysありがとうございました。
次回ライブ 決まり次第お知らせします。


【OtherWorks】
●2021年11月発売、RISA COOPERこと岡田梨沙のソロアルバムに1曲楽曲提供しました→特設ページ / 全曲Teaser動画
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あがた森魚 2013年~2021年複数アルバムにChoで参加しています。またライブも不定期でサポート参加中(Cho,AG,EG)
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●2019年公開よりロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚)エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。
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●「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。(同監督とは過去2作品でも提供しています)