日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

ベスト盤 全曲解説 (中編)花と路地のこと、アルバムタイトルのこと、髭。

全曲解説つづき(その2)

配信解禁&ダイジェスト公開記念 全曲解説 その2です。

公開済み分
>>前編「自作MVに初挑戦 ほか」

前ポストでも貼りましたがダイジェストムービーはこちら。


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「日曜日月曜日」

バンド「花と路地」で2012~13年ごろ演奏していた楽曲で、このベスト盤には別バージョン、2014年にソロ用にリアレンジしたものを収録。

2010年残像カフェ解散と同時にスタートさせたオルタナカントリーロックバンド「花と路地」。メンバーの流動的な時期を経て、2012~13年頃もっとも精力的に活動していました。

評判も上々でライブもたくさんやりましたがレコーディングに関しては長期戦になっていました。欲張って曲数を多く設定してしまったことや、僕のこだわりもあったり、ライブが多くて時間がとれなかったり...。そうするうちにメンバーチェンジ→活動休止という道を辿ってしまい、結局世に出せたのは4曲のみとなってしまいました。(それとは別にライブ盤が3作出ています)

ベーシック(ドラム+ベース)だけで言ったら15曲くらい録ったのかなぁ、そこから4曲だけ世に出してあと全部お蔵入り....悔まれるところです。その後メンバーの関係性は良好ですが、録っていないパートもあるし残念ながら今後も世に出ることはないでしょう。


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上に紹介したのは「日曜日月曜日」の2012年ライブ録音。初演なので歌も演奏もまだ固いですが、その後しばらくすると鬼気迫る演奏に変貌していきました。アウトロのみんなでコーラスするところとか花と路地の真骨頂でしたね。

既述のとおりバンドは休止してしまったのですが、この曲はとても大事な曲だったのでソロ名義でリリースしようと決めました。そこで未完のセッションの中から本人の了承を得て、ペダルスチール(渡瀬賢吾)とバンジョー(アダチヨウスケ)を移植し、それ以外は自身の演奏+打ち込みで制作したのが2014年リリースのこのバージョンです。


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あえて花と路地とは別の方向性にしたので賛否両論だったかもしれませんが、今聴き返してみると重めの歌詞が中和されてこれはこれで良いような気がします。

人生に迷う季節。苦しみよりもむしろ諦めや無感情に近い気持ちの中、夕闇にとけてしまうような感覚。最後は踏みしめて歩き出しますが。もうこんな歌詞は書かないと思うけど、自分の中では書いておかなければならなかった、そしてこの時期に残しておかなければならなかった大事な歌です。


「花咲く路地(2010×2018)」
※ダイジェストには未収録ですが、ベスト盤には(フィジカル・配信とも)収録しています。

これも花と路地の楽曲ですが、「日曜日〜」と同様、別バージョンをリリースしました。2010年の弾き語りアルバム『夏とギター2010』に指弾きしながら歌うスタイルで収録しています。

リリースから8年後ベスト盤のタイミングでその弾き語りに、コーラス、ピアノ、ベース替わりのチューバ(鍵盤で演奏)を追加録音し新たなバージョンを制作しました。(バンジョーも入れたけど思うようなクオリティにならなかったのでミックス時に削除)

花と路地でのバンドバージョンはライブ盤でも聴けますが、そのあと何回かアレンジも変えていったのできちんと完成させたかったなあ。どんな形になるか分からないけどいつかそのアレンジも再現したいなあと思っています。

花と路地唯一のオリジナル作品。
3曲入りマキシ『魔法を信じるかい?』(CDR/ライブ
会場+オフィシャルサイト通販のみで販売)。

このほかコンピ盤に1曲参加(「深呼吸」)していて、15曲ほどのなかからリリースに至ったのはこの4曲のみでした。


チェルシー
2008年『アイスキャンディー』収録、ただし「梅雨入り~」同様、数年前のデモを使用しているはずです(音質調整はしています)。

ベスト盤収録時のセルフライナーノーツには「拓郎meetsフィッシュマンズ」とあり、確かにと思えます。自分で演奏したレゲエ調のベースはかなり気に入っているし、ギターとオルガンもストイックでいい塩梅です。

鍵盤ハーモニカは自分の解釈も入れつつ、かちむつみ氏がライブ時に弾いてくれていたアプローチを元にしています。

萩原拓、松木俊郎、かちむつみ、鈴木健太による強力メンツ(通称「残像カフェ&松木俊郎グループ」と勝手に呼んでいた)でライブ活動していたのは2007年のこと。このメンツでの演奏をきちんと残しておかなかったのは本当に勿体無かった...(花と路地といい松木グループといい、自分の人生、ほんと同じ繰り返しですな...)

この時期は複数の編成を同時進行させていたり、ライブが本当多くてレコーディングするところまでいかなかったですね。(加えてまだレーベル所属中だったため、自主盤を作り始める前だったということも関係している)

それはそうとこの曲、妙に好きなんですよね。曲調もアレンジも、そしてなよなよした歌詞も含めて。実話で書いたわけではないけれど、自分と共通するものがあるのでしょう。

ちなみにチェルシーというタイトルの由来については先日の宇都宮ライブのMCで話しました(大した話ではないですが)。後日アップ予定のライブレポに書きます。


「拝啓、君は元気ですか?」
2012年『8月の心の揺れかた』収録。
東京でともに切磋琢磨していたミュージシャン仲間が田舎に帰ったり移住したり。そんな仲間に向けて手紙を書くという設定のフォークナンバー。

具体的なモデルが誰っていうのは特にないけれど、当時30代前半という年齢的なことや、前年の原発事故で遠方に移住するミュージシャンもけっこういて、そういう別れがいくつかありました。

拝啓~というタイトルや、使用楽器、アレンジ、音色など、吉田拓郎加川良の手紙」という曲のオマージュ。ソロライブでは毎回のようにやってきましたが、弾き語りで演奏することがほとんどだったので音源バージョンのアレンジも楽しんでもらえたらと思います。


「雨の中、女の子」
2013年『君の街 僕の街』収録。
初演は2007年、バンド「Everybody has the Waltz」(大森元気+岡田梨沙+村田シゲ)のレパートリーでした。

2013年、すでにバンドは解散しており、録音にはメンバーだった岡田梨沙氏(ds)に加え、当時出会ったばかりの谷口雄氏 (pf) に参加してもらいました。この2人はいま関取花さんや岡田梨沙ソロバンド、少し前はbjonsなど、いろんな場所で一緒に活動しているお二人でメジャー・インディー問わず大活躍しています。このときはまだ出会ってなかったんじゃないかなあ。

このREC時も同時には演奏していないので「俺が2人を引き合わせた!」とか恩着せがましく言うつもりはないのですが(笑)大活躍の未来を予見する人選だったなと。

ジャズっぽいような、もしくはビートルズ「I me mine」っぽいような。ベースのせいかな(自分で弾きましたが気に入っています)、マイナー調の曲もそんなに多くないので他の曲と比べてちょっとだけ雰囲気が違う曲という印象を受けますが、自分としてはこれもやりたい世界の1つという感じです。


「アイスキャンディー」
2008年、ソロ2ndミニアルバム『アイスキャンディー』表題曲。ライブ初演は2005年くらい?

1st「rain rain rain」もそうでしたが、ソロで出すときのリード曲はあんまり売れ線ぽくないんですね。そういう曲をあんまり作らなくなった時期だったのでしょう。

アーシーで、自分の趣味のためだけに作ったようなところもあったけど、意外にもファンの方々にも好評でした。

変にこねくり回さず、「ひたすら自然に」メロディーを作ろうという気持ちで作った記憶があり、それがそういう評価に繋がったのかも知れません。自然に作るということは、要するに歌っていても気持ちよいということ。

歌詞はメロと同時に浮かんだ部分が何箇所かあって、ストーリー的につじつまを合わせられないまま数年歌っていた記憶がありますが、結局REC時に最初に近い形に戻して最終稿としました。つじつまを説明がましく合わせるよりもイマジネーションに委ねてもいいんだと。そんなことも学びの1つでした。

尚「埋め立てられた海岸線」というボツ稿のワンフレーズがありますが、初期の村上春樹的世界観からの着想もあり。


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rain rain rainに続いてこの自作MVもトイデジ撮影のため画質が粗いです。そして人生においてこの時期だけ髭をはやしていて今見ると恥ずかしい...。まぁバイトとかも含めて、もう今しかできないよなという気持ちもありましたね。あと、何かちょっと変わりたかったのかな。

サンダル、アロハシャツ、海、長髪、髭....これは僕のヒーローである伊勢正三氏(特に70年代の後半の時期)の風貌やファッションへの憧れからでした。口髭とグラサンは勇気出なかったけど(笑)


アルバムタイトル「メランコリー」について

Everybody has the Waltz(前述)とその派生のSomebody meets the Waltz、いろんな編成の残像カフェ、ソロでのリリース開始、そして花と路地の結成から休止まで。僕の20代後半〜30代前半は、残像カフェ時代とはまた別の意味で目まぐるしく変わり続ける日々でした。次の記事で書きますがこのあとさらに大変貌の時期も訪れたり、仕事を何度か変わって自分のアイデンティティが根底から崩れるような季節も到来します。

やりたいこと、自分がそのときとのときでやるべきことをやっていたつもりだったけど、周りにはどう映っていたでしょうか。歌詞の内容もそうですが、そういう10年間のさまざまを総括して「メランコリー(=憂鬱)」というタイトルをこのベスト盤につけたのでした。

その後同じタイトルの曲を残像のブーケでリリースしますが、すでにその曲はあって、名前がかぶることについて微妙な気持ちもありましたがそれ以外に最適と思えるものがありませんでしたね。ジャケットデザインもあえて黒基調に自分の写真。売れるものも売れなそうだけど、、これが自分の30代のイメージですね。もちろんずっと悩んで暗かったかというとそうじゃなくて、楽しい思い出もたくさんあるんですけど。


後編につづきます

 

 

Information 


【News / Release】
◆旧譜(ソロベスト盤)「メランコリーOOMORI GENKI 2009-2018 BEST」11/2配信解禁

配信ストア一覧

◆2か月連続デジタルリリース決定 第2弾「ナツノユメ」9/22解禁

 配信ストア一覧
◆2か月連続デジタルリリース決定 第1弾は8/24解禁、残像カフェのセルフカバー「夏の星座」
 配信ストア一覧
◆「残像のブーケ」1stアルバム好評発売&配信中
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全曲ダイジェスト>youtubeに公開中→こちら 
その他
ティザー動画(×6)あり
◉CD 紙ジャケ仕様、歌詞&セルフライナーノーツ付
 OURLIFE MUSIC WebShopにて購入可
◉配信 各配信ストア一覧ページ→こちら

◆過去作品『君の街 僕の街』
配信解禁 & 収録曲から新たに「イツカノハル」リリックビデオ公開
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・「イツカノハル」リリックビデオ▶︎こちら
・『君の街 僕の街』サブスク各社リンク一覧▶︎こちら


【Live Schedule】>>スケジュールページ
宇都宮2daysありがとうございました。
次回ライブ 決まり次第お知らせします。


【OtherWorks】
●2021年11月発売、RISA COOPERこと岡田梨沙のソロアルバムに1曲楽曲提供しました→特設ページ / 全曲Teaser動画
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あがた森魚 2013年~2021年複数アルバムにChoで参加しています。またライブも不定期でサポート参加中(Cho,AG,EG)
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●2019年公開よりロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚)エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。
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●「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。(同監督とは過去2作品でも提供しています)