日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

隠されたストーリーは思いのほか残酷で~スピッツ「夏の魔物」カバー【動画シリーズ8月(2)】

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シュールすぎる初期スピッツの歌詞

「君のベロの上に寝そべって/世界で最後のテレビを見てた いつもの調子だわかってるよ/パンは嫌いだった」 と歌うスピッツの「テレビ」という大好きな曲がありますが、初期スピッツの歌詞はちょっと難解で、何を言っているのかわからなかったりします。

僕は親の世代の音楽(70年代フォークや歌謡曲)から音楽に入ったので、正宗氏みたいな歌詞の書き方は本当に衝撃的でした。全部が比喩というか。「一体何を言っているんだろう?」と。

インタビューをいくつか引用させてもらいます。

「僕のやり方として、絵描くのと一緒で例えばリンゴっていうものを描くとして、それを油絵の具で描くとした時に、必ずしも赤だけで塗らないっていう。青とか黄色とかも入れていくうちになんかそういうほんとのリンゴの赤っていうのが見えてくるっていうところで、言葉っていうのも全然関係ないようなところからポッと入れたりとか、(中略)言葉によるコラージュみたいな。
(『スピッツ』1998/こちらのサイト様より引用 
https://motoheros.hatenablog.com/entry/20130724/p1


4〜5枚目『Crispy』や『空の飛び方』の頃になってくると、比喩が散りばめられているのは変わらずですが、何となくストーリーや情景がわかるような作風に変わってきます。しかし特に初期の頃は意味があるのかないのかわからないレベルで。最初は難解を通り越してナンセンスなのか?とまで思ったものですが、ハマってからは病みつきになりました。

 

聴き手が勝手に解釈していいというスタンス

もう少し引用させてもらいます。

「聴き手にどう解釈されてもいいんです」(『1998.4/13号 ビックコミック スピリッツ』)

スピッツはどうにでも解釈できる曲を作っているんですけど、その一人一人の解釈が大正解ということで。」(『2002.11月号 COSMOPOLITAN』)

「まず作っている俺もよく分かってないから(笑)何が言いたいのか分かっちゃうような詞だと負けたみたいな気がするし、種明かししたら、つまらないでしょ?」(『2005.2月号 TV LIFE』)

(3つとも上記と同じサイトより引用させていただきました)

なるほどそういう考えで作られていたのでこんな芸術的な歌詞になっているのだと。そこには言葉自体の音の響きやリズムの心地よさもあるし、内容をあれこれ想像してみたりする楽しみもあります。

 

夏の魔物」なんとなく思っていた今までのイメージ

さて「夏の魔物」は冒頭に挙げた「テレビ」と同じ1stアルバムに収録された歌ですが、ほかの楽曲に比べると描写も多く、わりと想像しやすい曲なのかな?という印象でいました。ですが肝心の「夏の魔物」ってなんのこと?と考えだすとやはり一筋縄ではいかないようです。

この歌が大好きな割には(だからこそ)あまり追求しないで今日まで来た僕でした。 「幼いだけの」とか「ドブ川」や「クモの巣」、「二人乗りで」なんていう言葉があるので、勝手に何か、少年時代の懐かしい冒険とか、もしくは幼い頃ならではの妄想みたいなものをイメージしていた僕です。

だからカゲロウとかの虫であるとか(後年「カゲロウの集い」というツアー名あり)、蜃気楼的なものだったり、ツチノコケサランパサランや妖精や妖怪や、そういう不思議な存在?

 

隠されたストーリーがある?(ネタバレなし)

今回この演奏動画をアップするにあたり、このテキスト欄を執筆するまであえてファンの方々の解釈を見ないでおきました。なんとなく謎は謎のままにしておきたかった気持ちがあったんです。この歌がスピッツの中でもかなり大好きな歌だったのでイメージが崩れるのが怖かったのかもしれません。

ですがやはりコラムを書く以上、有益なテキストにしたいと思い検索することにしました。すると複数のサイトで「ファンの間では定説となっている解釈」があることを知り、その内容に衝撃を受けました。

予想していなかった内容だったので、個人的にはショックが大きく、同じショックを受ける人もいるかと思いあえてそのリンクは貼りません(こう書いた時点で気になってしまいますよね、ごめんなさい)

いやしかし、ノスタルジックでファンタジー的なこの歌だと思っていた自分。解釈した人も凄いし、書いたマサムネさんも改めて凄いなあと尊敬するばかりです。ただ感動半分、「知らなければよかったかな...」という気持ちも。もう、なんか鼻歌では歌えないな、、、。


解釈はそれぞれ

今回の演奏はその隠されたストーリーを知る前の最後の僕の演奏です。少し見える能天気さは次に歌うときには影をひそめることでしょう。撮り直そうとも思いましたがこれはこれで記録として残しておこうかなと。

 

ただ前半に書いたとおり「いろんな解釈をしてほしい、書いた本人も何のことかわかっていない」というスタンスで書いていた時期なので、この解釈がたとえ「ファンの間で定説」だったとしてもそれがイコール「正解」というわけではありません。解釈も、聴き方も人それぞれでよいのだと思います。

 

音楽的な所感

音楽的なことでいうと、僕の大好きな“マイナーから始まるイントロ”。6thを多用した寂しいメロディーライン、そして疾走感のあるテンポ感。本当に僕の大好きな要素が満載です。ヘンテコなギターソロも最高。

と言いつつ実際に演奏してみたのは初めてで、このビート感は意外に苦労しました。このギターのストローク、90年代のギターロックでは珍しくないビートではありますが、僕の辿って来た音楽歴からいくとわりと馴染みが薄くて。(油断するとカントリーのように2・4拍目アクセントになってしまうのでした)パンク?ニューウェーブ? 僕の通っていない未知のビート感です。

というわけで、まさかの意味を知ってコラムも長くなってしまいました。今週末は図らずもお盆です。(動画公開は8/10)

youtu.be

夏の魔物
Performed by 残像のブーケ(a.k.a.大森元気)
2021.8.10公開
Written by 草野正宗
Original release
スピッツ 1st Ab『スピッツ』(1991)
・〃 Sg「夏の魔物」(同テイク) (1991) 

 

◆弾き語り動画シリーズ(一覧ページ)はこちら

 

information 


大森元気(ex残像カフェ/花と路地)は「残像のブーケ」というソロプロジェクト名で2020年心機一転始動しました。

【News / Release】
◆20.12.24 アルバム先行 第2弾「boys&girls」期間限定デジタルリリース
・Trailer映像▶こちら
各サブスクへのリンクページ▶こちら

20.6.12 残像のブーケ初リリース曲「ぼくの愛する暮らし」参加コンピリリース
・MVつくりました▶ こちら
・各サブスクへのリンクページ▶こちら
※再生していただくだけでコロナ禍打撃店舗への支援収益となります

Youtubeチャンネルにて自宅で歌うセルフカバーシリーズ公開中。弾き語りシリーズ不定期更新中。

【Live】
20.8 残像カフェ10年ぶり再集結終了。ありがとうございました。
残像のブーケおよびサポート参加ライブは決まり次第お知らせします

【OtherWorks】
あがた森魚2020年アルバム『浦島2020』に2曲コーラスで参加

あがた森魚2019年アルバム『観光おみやげ第三惑星』複数曲にコーラスで参加
・2019年公開より1年以上今なおロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚)エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。
・「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。