日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

平手友梨奈さんのこと~欅坂と乃木坂の辿った道

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画像引用元:欅坂46/櫻坂46オフィシャルサイトより

お知らせ関係や活動報告の投稿が続きましたが久しぶりに趣味(?)記事です。

欅坂46ドキュメンタリー映画
欅坂46ドキュメンタリー映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』が現在公開中だそうです。

今年1月に”絶対的センター”と言われた平手友梨奈が脱退、そして今月配信ライブをもってその名前での活動を終了する欅坂46。(今後は櫻坂46と改名し再始動を予定)

フォークやロックしか聴かなかった僕がここ2年くらい乃木坂を追いかけてることは何度かここやSNSで書いていますが、同じ坂道グループの欅坂46についてはほとんどタッチしていませんでした。

それでも欅坂のニュースはいろいろと目にしていました。鬼気迫るパフォーマンス、紅白歌合戦などで踊り終えると同時に倒れてしまうなどのエピソードはたびたび話題になっていたし、アーティストや芸能人にもファンが多く絶大な人気と高評価を得ていた彼女たち。

そんな中、リリースが滞り、平手さんが脱退、残ったメンバーで立て直しを図るも活動終了して改名...。そんなニュースが耳に入ってくるたびに興味深く、またファンではなくとも少し心配な気持ちでチェックしていました。

今回公開されているドキュメンタリー映画ではそこらへんをかなり踏み込んで描いているようで観てみたい気持ちが強まっています。内容や感想レポは、BOSSSTON CRUIZING MANIA/グッドマンのブッキングでもあるカシマエスヒロ氏のnoteを読んでもらえたら早いです。(映画を見ていないのでわかりませんが多分ネタバレありです)

こちら↓

note.com平手友梨奈がどれだけ凄いのか。そして「欅坂イコール平手友梨奈」なのか?というファンが抱いていた疑問と葛藤。平手不在時のメンバーから見えてくるこのドキュメンタリーの (もう1つの?) テーマ。

量はありますが、読みやすく、前知識のない人にもわかりやすく、そして的確にまとめられたテキスト。ファンでなくてもぜひ読んでもらいたい文章です。


◆ファンでなくとも伝わってきた平手さんの異様さ
圧倒的な実力であるがゆえに、孤高の存在となり、欅坂の“顔”にされ、結果的ではあるにせよ利用された...と言ったら語弊があるでしょうか。そんな彼女の運命を思うと切なくなります。

在籍期間最後の紅白出演となった昨年末。「僕は嫌だ!」というセリフが印象的な「不協和音」。パフォーマンスの最後、“狂気を帯びた笑み”と話題にもなりましたがその表情は僕も見ていてぞわっとしたのを覚えています。

詳しいことは知らないままに、平手さん、そしてそれを取り巻くグループ全体から発する気迫はこれでもかと伝わってきました。あの笑みは単に2年前のリベンジにかけた気迫というだけにとどまらず、ひょっとして誰かを呪おうとしているのではないか?と思えるほどの狂気でした。

【紅白】欅坂46気迫の「不協和音」に内村感動「よくやった!」 SNSでも「最強で最狂」と絶賛 | ORICON NEWS

それは彼女を取り巻く環境だったり、そうなる運命だった状況であったり、そういうものに対する恨みだったのかも知れません。あるいは単に楽曲に入り込むがゆえの憑依だったのかもしれないしそれは分かりません。

けれども、加入時無邪気な少女だった平手さんがあんな表情を見せられるようになったという事実はゆるぎない事実であり、それには厳しい状況の中でもがいていたことが大きく関わっていたのではないでしょうか。


◆「大人を信じない」という発言
そういえば以前(調べてみたら2017年でしたが) 平手さんが「SONGS」の特番でセカオワとのスペシャル対談に出ていたことがあって、そこで「大人はみんな信じません」というようなことを発言していたんですね。そのときのことがとても印象に残っています。

ブログ冒頭で「フォークやロックしか聴かなかった僕」と書きましたが、乃木坂の前にPerfumeにかなりハマった時期があって(あえてアイドルと書きますが)それがアイドルに対する見方を変えてくれたということがありました。

Perfumeの魅力はいろんな要素があり多岐にわたるのですが、そのうちの1つが大人を巻き込めるということなんです。ストイックに努力し、思い通りにならない状況にひねくれることなく、売れなくても諦めず、そのうち1つ1つ結果が出ていく。

「アイドルなんて聴かなかった自分がこんなに夢中になるなんて」という人(特におっさん)が本当に多くて (YouTubeAmazonのレビューに溢れています) それがすべてを表しているのだけど、「若者だけのもの」「オタクだけのもの」ではなく、世代やジャンルの壁をどんどん飛び越えてまったく興味のなかった人たちを夢中にさせてしまう。ときに人生まで変えてしまったり。

他のアイドルを僕はあまり知らないので主観になるのですが、そういう、年齢・性別・ジャンルあらゆるものを巻き込んで人々を夢中にさせていく力を持っているのが僕の好きなアイドル像なんです。

前置きが長くなりましたが、だからその番組で平手さんが「大人は信じない」と言ったのが僕はとても残念だったんですね。若者のカリスマ、代弁者みたいな存在であるということはその時点ですでに知っていたし、それは素晴らしいことで。けれど一気に突き離されてしまったように思いました。

嫌悪感を感じるとかではなかったけれど、そのときは内情なんて知らないし「ああーそういう感じね」とこちらも認識して、そのあとは歌番組に出ていれば観るくらいの距離感でずっと来てしまった気がします。

今思えばあの発言は、平手さんの才能や魅力を周りが頼るだけ頼って、(カシマさんは先のnoteの中で、そこにはファンも含まれるし、そうせざるを得ないクリエイターの芸術的欲求であるとも指摘していますが)そういう中でどこにも逃げ場のない状況から発された発言だったのかなと思います。


◆自然体の平手友梨奈
そういうわけでそれが3年前ですかね。でも僕的にはそこで嫌いにならなかったし何となく気になり続けていたのは、彼女や、グループ全体の魅力だったり、気迫から真剣に向き合っているのが伝わってきたからなのだと思います。

そんな中、つい先週にはサカナクションの番組「シュガーシュガー」に平手さんが出演していて、VO山口氏と公園のブランコのセットで対談をしていました。

そこで見る平手さんは自然体で、素直で、謙虚で、けれども妥協やうわべの発言はしない正直さも見えて、つまりはとても好感の持てるものでした。

「つらかったことは?」と聞かれて「いろいろあった」みたいな返答だったかな。さすがに具体的には言えないとは思いますが、「センターは嫌だったしプロデューサーにも伝えてきた/自分には合わなくて疑問しかなかったけれどやるとなったらちゃんとやりたいし、曲を届けたい思いが強かったのでやっていました(要約)というような発言も印象的でした。

平手友梨奈が本音、センターは「ずっと嫌だと言ってきた」:サカナ山口を相手に語る【エンタメ】

(前後編に分かれており、後編は今夜放送)


大人たちは彼女の素晴らしい魅力と努力とをああいう形で浪費するしかできなかった。多分同じ状況になればまた同じことが起こるでしょう。それだけ突出していたのでしょうし、素晴らしい素材があれば(芸術的/ビジネス的の差異はあるかもしれませんが)それを使わないという選択肢はないのが悲しいところです。

でも脱退して自由になれたと思いたいです。これからはいろいろな活動の場があるだろうし、仕事も選べるだろうし、楽しみです。...と軽々しくいっていいのか分かりませんが、とにかく苦労し疲弊した分、これからはやりたい仕事をやりたい形でやってほしいなと思います。

芸術家肌ゆえスマートにいかないこともあることは予想されるけど、周りによき理解者がいるといいなと勝手に願ったりもしています。


◆乃木坂の場合
平手さんが一人だけ抜きんでていたというけれど、僕は追いかけていなかったのでそれが他のグループのセンターと比べてどれだけ凄かったのか、どこまで想像を超えてくるのかはわかりません。なので単純に比べることはできないけれど、乃木坂の歴史を見てみるといろんなことが違ったのだなあと思います。

乃木坂の場合、最初は生駒ちゃんがずっとセンターでやってきて、平手さんのようにセンター固定席のような状態でした。けれど途中で辞退し、その後卒業。そのとき乃木坂は終わってしまう可能性もあったのかも知れません。

けれど、いくつかの要因があり乃木坂は続いていきます。
第1に次々とセンター格のメンバーを生んでいったこと。白石麻衣西野七瀬橋本奈々未生田絵梨花齋藤飛鳥と次々に「顔」となるメンバーが育っていきました。

第2に様々なメンバーが様々な場面で活躍し始めたということ。上で挙げたメンバーのほかにも松村沙友理高山一実秋元真夏井上小百合山崎怜奈新内眞衣など(まだまだ他にもいますが)モデル・舞台・バラエティ出演・ラジオパーソナリティー・執筆など多方面で活躍。齋藤飛鳥堀未央奈山下美月梅澤美波などは映画に。

また卒業後俳優となった深川麻衣若月佑美、アナウンサーとして活躍中の斎藤ちはる市來玲奈などもいます。これによってグループ全体の底上げも出来、「誰か1人が突出しすぎない」状況も作ることができたような気がします。

第3に新期生の導入の仕方。2期生がまだ研究生扱いだった中突然センターに抜擢され物議をかもした堀、同様に3期生(与田・大園ダブルセンター)、4期生(遠藤センター+嘉喜・筒井がフロントで両脇を固める)というように加入して間もない新期生を大胆に抜擢することで、育成とプロモーションと両方の意味で世代交代をよりスムーズなものにさせているとも言えるのではないでしょうか。

乃木坂のほうが自分は詳しいのでこういう書き方をしてしまいましたが、僕が知らないだけで欅坂でもいろいろな試みが行われていたのかも知れません(それだったらごめんなさい)。ただ意図的か偶然の流れも手伝ったのか、乃木坂はセンターや世代をどんどん変化させ、対照的に欅坂は、さまざまな試みがあったにせよ平手友梨奈一強体制のまま燃え尽きるまで走りきる結果を辿りました。

言うまでもないですが乃木坂=正解で欅坂=失敗と言いたいのではありません。続くことだけが正解ではないし、純度を薄めるような方針変化をせずに終わる美学もあります。それはバンドのメンバーチェンジとかも同じですよね。正解などないのだと思います。


◆櫻坂はどこへ向かう?
欅坂はもともとは乃木坂の派生プロジェクトで、乃木坂の初期のハードめな楽曲「制服のマネキン」をイメージして作られたと記事で読んだことがあります。欅坂のあの鬼気迫るパフォーマンスはその方向性を突き詰めていった賜物(たまもの)であると言えるでしょう。

その道筋ゆえ、ある種殺伐とした雰囲気もマッチしてしまったし、その結果平手さんを追い込んでいったのはある意味当然のことだったのかも知れません。そしてそんなふうに活動していたらすぐ魂は削られ、炎が消えてしまうこともまた避けられないことだったのでしょう。そうじゃない曲もあるでしょうし、外野が勝手に言っていますがそんな気がします。

櫻坂46として再出発する彼女たちにはどのような楽曲が提供され、どのような色合いのパフォーマンスを提示するのでしょう。どんな空気感で? 鬼気迫る雰囲気は残すのか変えてくるのか。そんなことをあれこれ考えると興味深いです。欅坂の幻影を──それは平手友梨奈の幻影とも言えるのでしょうがそれをどのように払拭し、超えていくのか。楽しみに見守りたいと思っています。

なお(吉本坂は置いといて)もう一つの坂道”日向坂46”は初のアルバムが発売となり今あちこちで展開されています。アルバムはまだ聴けていませんがこれまでのシングルを聴くにつけ乃木坂とも欅坂とも違う方向性を獲得した感があり。3つの坂道が三者三様になってそれぞれ違う魅力を発していってくれたら本当に素敵だと思います。


◆おまけの心配?!
あー...くれぐれもシャッフルとかはやらないで欲しいな...と今書きながら心配になりました(番組とかの企画ならいいけど)。シャッフルでなくても交換留学とか過去にあったから(生駒里奈がAKBへ、松井玲奈が乃木坂へ交換在籍した) その可能性もなくはないのかなあ...。とおかしな結びになってしまいましたが今回はこのへんで。



◆◇information◇◆
【News / Release】


新プロジェクト“残像のブーケ” 「ぼくの愛する暮らし」MⅤ公開中
・同曲コンピ参加 & サブスク解禁
 ※再生していただくだけでコロナ禍打撃店舗への支援収益となります
Youtubeチャンネルにて、自宅で歌うセルフカバーシリーズ(不定期)更新中

【Live】
残像カフェ10年ぶり再集結終了。ありがとうございました。
残像のブーケおよびサポート参加ライブは決まり次第お知らせします

【OtherWorks】
あがた森魚2019年アルバム『観光おみやげ第三惑星』複数曲にコーラスで参加
・2019年公開より1年以上今なおロングランを続けている映画『嵐電』(らんでん)(監督:鈴木卓爾/主演:井浦新/音楽:あがた森魚エンディング曲にコーラスで参加。DVDのほかサントラも発売中。
・「アートにエールを!」出展作品佐島由昭作品「遠くの窓からこんにちは」音楽を担当。YOUTUBEにてご覧頂けます。