前編アップ後に少々追記しました(→伊勢正三氏のくだり)。僕のギター史に彼のエレキは必須です。
さて。というわけで今回は後編です。新しい方向性の模索。
◆はっぴいえんどの変化とシティ
前編でも書きましたが<歪んでいて、ブルース系の爆音ギター>がライブ時の僕の基本でしたが、音源は別物と考えていて、音を重ねるにあたり別のアプローチも常に探っていました。
“はっぴいえんど”は初期のラウドでサイケな感じが好きでしたが、後期やソロワークスもすぐに好きになっていきました。ストイックでファンキーな音楽へ。いわゆる「シティ」と形容される音楽的指向。キャラメルママ/ティンパンアレイの参加作品群やシュガーベイブなどもその流れで。
とは言えそのあたりの音楽は、リスナーとしては好きでしたが雰囲気でしかコピーできなかったですね(苦笑)。演奏の上手なフォロワーは周りにたくさんいたし、自分たちはそこじゃないなという気持ちもあったかな。いいとこ取りくらいでいいかなと(笑)。
Happy End - 抱きしめたい (Dakishimetai) LIVE!
初期の曲も新しい解釈で披露されたはっぴいえんどの解散ライブ。歪みが抑えられ、グルーヴが変貌したアレンジはとても新鮮。
◆南こうせつ氏のバックバンド(Dig it / Dr.K project)
以前の記事で書いたように、僕は小学生の頃から南こうせつ氏に熱中していました。
70年代のこうせつ氏は、Gt-水谷公生、Ds-田中清司、Ba-武部秀明、Key-渋井博という名だたるスタジオミュージシャンによるバンド(“Dig it”と名乗っていた)を率いていました。「スタジオミュージシャンっぽさ」と「ドタバタのロックバンド感」が同居していて、ものすごくカッコいい。ライブ盤とか特に最高で、今でも繰り返し聴きます。(水谷氏はキャンディーズなど、田中-武部両氏のリズム隊は拓郎「live’73」でも聴けます。)
こうせつ氏をリアルタイムで追いかけるようになった90~00年代は、Dr.Kこと徳武弘文氏が率いる“Dr.K Project”がバックを担当するように。(バンド単体のときとこうせつバンドのときでメンバーに若干の違いがあるようです)。Dr.Kのギターは水谷さんとはまったく違うアプローチで斬新に聴こえました。当時中学生の僕はもっとコテコテで激しいギターのほうが好みでしたが、だんだんハマッていき、自分がバンドをやる頃には勝手に師匠と呼ぶほどになっていました(笑)。
いい動画がなかったので貼っていませんが、90年代~2000年代初頭のこうせつ氏のアルバム(ほぼ毎年発表)にすべて参加しています。こうせつ氏以外にも数々のミュージシャンに参加しているDr.Kですが、こうせつ氏の楽曲との相性は独特のものがあったように思います。曲を殺さず、かつ化けさせる。言わば化学変化だと思います。
◆徳武弘文あれこれ
そんな徳武氏。70年代から今日に至るまで、泉谷しげる、ブレッド&バター、ムーンライダーズ、大瀧詠一、吉田拓郎、南こうせつ、近年の細野晴臣、そして自身のバンド「ラストショウ」やベンチャーズ関連のコラボ、数々のCM曲などでも活躍し続けています。
こちらは吉田拓郎氏の78年の音源から。徳武氏のストリングベンダー(後述)のプレイがカッコいい!
こちらはカントリー全開なアプローチで2011年のムーライダーズ参加時。ああカッコ良すぎる..。
【再アップ】 moonriders 髭と口紅とバルコニー 【Live.2011】
カントリーリックをポップなメロディーにはめ込んでいく。彼とすぐわかる音色とタッチ。カントリーなんだけどカントリーじゃない曲にも適応できるし、それがまた何というか曲をぐっとポップにすることができるんですよね。
◆残像カフェ時代のDr.Kオマージュ
ラウドに弾いていた残像カフェ時代でしたが、わりと初期から徳武氏のオマージュには挑戦していました。
2nd収録「さよならナンバー」、3rdの「3月のシーン」「OURLIFE」「やっぱりあえなかった」の4曲でDr.Kモデルのストリングベンダーに挑戦しました。 「ストリングベンダー」とは、ペダルスチールの効果を出せる装置のことで、これがテレキャスターに付いているDr.Kモデルが98年くらい?に発売され、それを運よく購入していたのです。僕が大学生のときでした。
スライドでもチョーキングでもないニュアンスで音がぴよーんと上がっているのがベンダーの奏法。
Dr.Kテレキャスターは限定生産で、再発時にはベンダー無しになってしまいました。採算の問題もあったのかもしれませんが部品が生産終了だったようです。弾いている人はときどき見かけますが(鈴木慶一氏、白岩萬里氏、石本聡氏etc)中古市場でも見ることはなく。よくぞ買っておいてくれた!と当時の自分を褒めたいです(笑)
あのとき無理して買っていなかったら残像カフェも、その後の音楽的指向も、もしかしたら人生まで変わっていたかもしれません....と書くと大げさだけど、でも本当だよなあ。
※ちなみにDr.Kモデル以外にもベンダー付ギターは流通しているのですが少しタイプが違います。レバーを腰で動かすDr.Kモデルに対して、一般的なベンダーはストラップピン部分と連動になっており、当時の僕は演奏のアクション中に音程が変わってしまうという難点がありました。
正規録音でベンダーを使ったのは前述の4曲だけでしたが、カントリー的な奏法や、オールディーズっぽいフレーズ、音色・トーンなど、徳武氏のギターのフレイバーはあちこちでオマージュしています。“花と路地”や、人のバンドで弾く時にも重宝しましたね。
◆コモンビルと同世代のカントリーロック
ギタリストであればみんな知っているDr.Kですが、同世代のバンドでこの感じを取り入れているバンドはほとんどなかったので、割とそれは積極的にやっていましたね。残像が評価されたのはもっと違う要素だったのでどこまで伝わっていたのかはわかりませんが、、。
ベンダー奏法を取り入れた「OURLIFE」という曲を残像で録音したときに反応してくれたのが尊敬する先輩、コモンビルの玉川さんでした。
当時独自のカントリーロックを強烈に鳴らしていたコモンビル。exヒップゲローの玉川さんと故・西山君(fr.初恋の嵐)によるダブルソングライター体勢の1stが特に好きでした。玉川さんの超絶カントリーギターと村中さんのペダルスチールの掛け合い、やばかったなあ。でも楽曲自体はキャッチーで、玉川さんと西山君2人のボーカルの対比もよくて。本当最高のバンドでした。
玉川さんは間違いなく僕のギターヒーローの1人でしたね。いつもニコニコしているのにいまだに緊張して話せません(笑) それから初恋の嵐も、西山君が急逝しなかったら多分もっと密に絡んでいたのではないかと思うのです。ていうかそうさせて欲しかったバンドでした。レーベルも一時同じだったし、編成も音楽性も共通点が多かったので。もっといろいろ話したいと思っていた矢先の急逝でした。
◆自分の新しいプレイスタイルの模索
さて、Dr.Kに話を戻すと、今自分が作っているアルバムでも行き詰ったときにヒントになったのがDr.Kのスタイルでした。今回はDr.Kに、エイモスギャレットを勝手な解釈で融合させてみたら?という恐れ多い挑戦をしてみています。
Maria Muldaur - Midnight At The Oasis
エイモスといえばこのギターソロ。こんなふうには弾けないし、狙えもしないけれど。あくまで雰囲気と気持ちだけ。
Amos Garrett "Sleepwalk" Japan Tour 2007
こちらのライブ映像はわりと近年で2007年。個人的に、動くエイモスを(画面越しだけど)観たのはこれが初めてで、衝撃でした。
モノノフルーツの稔くんとか、渡瀬くん(bjons、roppen、ex花と路地 etc)など、エイモスを彷彿とさせるギタリストが周りにいます。僕は全然そこまで追及できてないし、ライブで弾ける自信もないけれど、わずかでも自分のスタイルの一部に取り入れることができたら素敵だろうなあ。もっともっと練習しないといけませんね。。
◆出会う前と出会った後でまるで変わった高木克さんとの出会い
長くなりましたが、最後にもう一人だけ影響を与えてくれたギタリストを。
残像カフェからメンバーが抜けた2006年。僕1人になった時期にサポートしてもらった高木克さん(現 ソウルフラワーユニオン)。彼のギターは衝撃的でした。
僕の聴いてきた音楽とかぶる部分はそんなになかったのですが、それが逆に勉強になったし、弾きっぷりっていうのかな、コードを鳴らすときの潔さとスピード感。曖昧な音が1つもない感じ。硬い音なのに耳に痛くないトーンとか、本当にかっこよくて! 学ぶことだらけでした。
高木さんと出会う前と出会った後では、自分のコード弾きのフォームや、弾くときの気持ちの乗せ方がまるで変わった気がします。ジャキーン!と弾ききる潔さ、かっこよさを知りました。全然比べ物にならないですけどね。
他にも、まわりの仲間達に教えられたことも多かったです。書き出したらきりがなかったのでやめときます。
というわけで、長々とお付き合いありがとうございました。
ライブのときは歌いながら弾くし、レコーディングを始めてしまうと“ギタリスト”というより“アレンジャー”っぽい気持ちになってしまうので、なかなか自分がギタリストだと自覚することは少ないのですが、書き連ねたようにこだわりはあるんですよね。それを形にすべくレベルアップしていきたいものです。
現状ギターで食っていくことは難しいけど、練習なんていくらでも出来るはずだし、探求し続けることは大事ですよね。そして他の人ではなく僕に需要があるようなプレイスタイルを持てるようになったらいいなあと思います(思ってるだけじゃダメですが!)。ギターの旅、続きます。とりあえず、新アルバム製作中なので、楽しみにしてもらいたいです!
information
【release】
●現在新作をレコーディング中です。
別ブログ「大森元気の制作日誌」随時更新中。
●自主レーベル10周年&大森元気30代を総括するbest盤
『メランコリー OOMORIGENKI 2009-2018 BEST』 発売中
現在はライブ会場&通販にて購入可。→こちらから
【live】
決まり次第お知らせします。
音源が完成したらもう少し頻繁にやりたいなと思っています。
お誘いもお待ちしています!
【works】
現在全国公開中 映画「嵐電」(らんでん)
(監督=鈴木卓爾/主演=井浦新/音楽=あがた森魚)
あがた森魚によるエンディングテーマにコーラスで参加しています。