日々の残像VI〜音楽と暮らし〜

残像のブーケ/大森元気のブログ - since April 2019

新緑の野音へ~きっかけと影響をもらい続けている人

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「音楽を語っていこう!」なんて意気込んでみたものの、ぜんぜん更新ができませんでした...。今回は5月の遡りに絡めて、僕の音楽的原点ともいえるアーティストの話。

◆日比谷野音と“GREEN PARADISE”
5/11。毎年恒例の南こうせつ@日比谷野音ライブを観に行きました。日比谷駅に着いて地下鉄の階段をのぼるときの、日比谷公園の緑が見えてわくわくする瞬間が本当に好きです。

緑あふれる野音で、5月の風に吹かれながら観るライブは本当に心地よいです。雨の回は本当に凍えますが...それもよい思い出となりますね。


様々なゲストも呼びながら開催されるこうせつ氏のこのイベントは、“GREEN PARADISE”というタイトルが付けられ、緑の大切さを訴えるというテーマで毎年行なわれています。(初期はみどりの日に行われ、近年は5月の土曜日に。) 1992年からなので今年で27回目です。

僕は1度だけ仕事で行けなかったのですが、それ以外は毎年行けています。初めて行ったときは僕は中学生(!)でした。今や40代に突入。いろんな年齢でその時期それぞれの楽しみ方があった気がします。

10代の頃は盛り上がる曲が多ければ多いほどいいみたいなところもありました。こうせつは暗い歌だけじゃないんだよ!みたいな感じで周りに訴えることも多かったですね。こうせつファンあるあるですが笑

20代は上京し様々な音楽に興味を持っていく中で、フォークに対しての反抗期?みたいな感じで普段はあまりフォーク聴かず、モードになれない時期がありました。それでもライブに行けば見事に感動してしまって「参ったなぁ..」という現象が何年か続きました。

バンドでデビューする頃になると、アレンジのことや、演奏のことにも耳がいくようになって、いろいろと勉強したり。
30歳前後にはいろんな悩みの中で歌詞が本当に沁みて。小さい頃から聴いていた曲なのに自分でもびっくりするくらい泣けてしまったり。

そして今41歳。あと何回楽しめるだろうか、こうせつ氏もファンのみんなにもいつまで会えるだろう、この貴重な時間を噛み締めたいという。そんな気持ちですねぇ。


このライブのために全国のファン達が集まるので、ライブの日は友人達との再会の日でもあります。近況を交換し合ったり、ライブ前には持ち寄ったギターで歌ったり、終わったあとは打ち上げもしたりして、そういう意味でもかけがえのない集いになっています。

それにしても27年。時の流れを実感するとともに、毎年欠かさずこんなイベントを続けているこうせつ氏や、事務所、そして追いかけるファン達も本当にすごいと思います。


◆シリーズ オールナイト フェスのはしり?! “サマーピクニック”
ちなみにGREEN PARADISEより前、こうせつ氏は別の恒例イベントを続けていました。1981~1990年の10年間「サマーピクニック」というイベントがそれ。(復活版として2014年と、今年2019年に単発でも開催)

これはゲスト多数という点ではGREEN PARADISEと同様ですが、東京ではなく九州で開催、しかもオールナイトで朝まで歌い続けるもの(復活版は除く)。 初期は山の中の特設会場で行われ、1回目などは集中豪雨と落雷で会場が水田状態となり、途中で中止となったそうです。そんな自然の脅威と素晴らしさを感じながらのオールナイトイベントは、現在のフジロックなどの自然型フェスに通ずるものかなと思います。

全国からファンが集い、熱烈なファンの中には仕事をやめ、何週間か前から近くでキャンプ生活をしていたグループもあったという...。僕は未体験でしたがファンのみんなにとっては青春とか、生きがいとか、そういうレベルだったのだと思います。


そんな一大イベントを毎年やりながら、並行して全国ツアーやフルアルバム制作、そしてテレビ出演もこなしていた1980年代のこうせつ氏。

【追記】別のイベントとして、80~90年代には広島ピースコンサートというイベントも続けていました。大友康平山本コータローらとともに、世代や音楽性を越えた多岐にわたるアーティストを呼び、その基金から原爆養護ホーム建設のための寄付金を捻出したり。

フォークブームが去り、新しい世代のミュージシャンが次々と現れる中で、そういう情熱と行動力――もちろん音楽的クオリティーは言わずもがな――があったからこそ、浮き沈みの激しいシーンで、ファンの心をがっつり掴み続けたのだと思います。


◆こうせつから学んだあらゆること
過去ブログやインタビュー等で何度も公言していますが、南こうせつ氏は僕の音楽の原点であり、音楽を始めたきっかけであり、現在も影響をもらい続けている人です。

パブリックイメージであるしっとりとしたフォークにとどまらず、ライブで盛り上がる楽しい曲やロック系の曲たち。いろいろな曲調があり、さまざまな音楽的要素にあふれている。

僕は、フォークや歌謡曲はもちろん、ロックも、ブルースも、カントリーも、アメリカンポップスやオールディーズも、ときにはマイナー調のレゲエも、ソウルの歌いまわしや、間奏をアドリブで回していくスタイルや、ライブの盛り上げ方や、あらゆることを彼と彼のバンドから学んで来たのでした。

そしてそれだけの要素があふれながら、最終的には「こうせつらしさ」をまったく失わないということも凄い。これは意外に簡単ではないことだよなと。「とりあえず取り入れてみました感」や「背伸び感」を感じず、自分らしさのままで様々な音楽が生きているのが本当に凄いと思うのです。

さらに、“半農・半ミュージシャン”のライフスタイルや、子どもや育児を題材にした楽曲など、自分がこの歳になって共感することも多いです。

小6でたまたま好きになったアーティストが、今もまだ自分にこれほどに影響を与え続けてくれているというのは驚きを隠せないです。小6の自分の目に狂いはなかった!(笑)。


◆当面の目標
それにしても70才だというのにこうせつ氏の歌声は40才くらいから全然変わっていない(風貌もですが)。音域も声量もキープし続けている。これは本当に凄すぎるなあ...。才能もあるだろうけど、日々努力をし続けている結果なのだと思います。

自分は日々の忙しさにかまけてどれだけ怠けているだろう..と反省します。今41歳、おそらく今後の音楽的・フィジカル面での分岐点が今なのだろうと気づいてはいて、焦りもします。


僕が残像カフェでデビューした頃、いくつかの幸運な縁がありました。
ラジオに出させてもらったり、再発版のCDに封入されるロングライナーノーツを執筆させていただいたり。

もっと頑張れていたら、そんな縁をさらに広げられたのかな。この野音ライブには毎年ゲストがたくさん出るから、一度くらいは呼んで頂けないか?...そんな夢も持っていました。もちろん諦めるのは早いけど、もっと一流の音楽家になれるよう努力しなければいけないし、今の活動ペースでは現実的ではないのかなあと冷静に考えれば思いますね。(...という言い訳とも言えますが)


でも、今作っているアルバムを完成させて、それをこうせつさんに聴いてもらいたいなという気持ちはあります。今回はそれほどフォークフォークしたアルバムではないけれど、それが当面の目標の1つですね。そのためにも良いものを作りたい。早く仕上げたいです。

そしてこうせつ氏にお会いしたときに言われた言葉、「とにかくライブが大事、たくさん歌うこと」。その言葉を胸に、いま減らしているライブをまた再開させたいなあとも。


information
【release】
●現在新作をレコーディング中です。
  別ブログ「大森元気の制作日誌」随時更新中。

●自主レーベル10周年&大森元気30代を総括するベスト盤
  『メランコリー OOMORIGENKI 2009-2018 BEST』 発売中
現在はライブ会場&通販にて購入可。→こちらから
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【live】
決まり次第お知らせします。
音源が完成したらもう少し頻繁にやりたいなあと思っています。
お誘いもお待ちしています!

【works】
現在全国公開中 映画「嵐電」(らんでん)
(監督=鈴木卓爾/主演=井浦新/音楽=あがた森魚
あがた森魚によるエンディングテーマにコーラスで参加しています。